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今まで我慢していたのを
その言葉に、松葉杖をつく娘は今まで我慢していたのをこらえきれずに涙を流しはじめる。自分の体に刻みつけられた傷は一生のあいだずっと残されてしまうのだと訴えるように。
娘は泣き声を押し殺しているが、その悲観的な姿が僕の罪悪感を大きく膨らませてゆく。
「本当に申し訳ありません。なんとお詫びをすればいいやら……」
「それで今回、この一家のケガについて、あなたにどのような責任を取っていただこうかと、話し合いにやって来たわけです」
保険屋の言葉に僕は大きくうなずく。ちゃんと責任は取らなきゃいけない。できることならなんでもする。そんな気分で。
僕は一家全員と保険屋と弁護士を家に上げる。ゆっくりと話し合いをするため。そしてお茶やお菓子で精いっぱいのもてなしをする。
涙を流し続ける娘、怒りと憤りの父親と息子。無言のまま僕を軽蔑するような視線を送る母親。一家の存在が僕の罪悪感を刺激し、僕はいたたまれない気分に陥る。
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