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カネで解決できるのなら
「示談ですか? いや、本当に助かります。それで具体的には?」
「まあ、こういうときには慰謝料ということになりますなあ」
仕立ての良いスーツ姿の弁護士が、今日の天気はいいですねえと言うように僕にそう告げた。
「慰謝料ですか……」
僕は慰謝料の金額がどのくらいになるのかと不安になる。その一方で、警察に突き出されず、カネで解決できるのなら、少々慰謝料が高くてもいいじゃないかという気分がやって来る。
「その慰謝料の金額というのがこちらになります。ここにはケガの治療費も含んでます」
保険屋が一枚の書類を僕に手渡す。僕の手が思わず震える。
「いや、この金額はとても……」
なんてずうずうしい金額だ。書類の金額を見て、最初に僕の頭に浮かんだのはそんな言葉だった。書類に書かれた慰謝料の金額は、それなりの新築マンションを買い、さらにそれなりの外国車を新車で一台買える金額だ。
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