その届かない数センチが

僕の言葉をさえぎるように

「正直、こんな金額はとても無理ですよ。ほら、この家を見てください。とてもそんな金額を払えるようには見えないでしょ？」

　僕は正直にそう伝える。弁護士と保険屋の表情が険しくなる。

「でも、あなた犯罪者にはなりたくないでしょ？　それとも今から警察に突き出しましょうか？」

　保険屋が怒ったように僕にそう言った。

「いや、さすがに警察はちょっと……」

「では、この金額を今すぐにお支払いいただくしかありませんな」

　弁護士が僕の目を強く見つめる。お前には何も選べないのだと告げるように。僕は思わず弁護士と保険屋に怒鳴りつける。

「今すぐこんな金額を払えなんてムチャクチャだ！」

　弁護士と保険屋がため息をついた。僕たちのやりとりを無言で聞いていた一家も深くため息をつく。僕の部屋は一気に険悪なムードに。

「警察も慰謝料も拒否。あなた、本当に反省しているんですか？」

　弁護士があきれたようにたずねる。

「そりゃもちろんです。反省してますし、みなさんのケガの治療代も慰謝料もできるだけお支払いしたいと思っています。けど、この金額はとても僕には……」

　そのとき、僕の言葉をさえぎるように、保険屋が弁護士に語りかける。