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こうなった以上は
「ならば取るべき方策はひとつしかないですねえ、先生」
「しかたないですな。こうなった以上は」
二人は顔を合わせてうなずきあうと、二人がかりで僕をつかまえる。それから一家の父親と息子も加わり、僕にロープをぐるぐる巻きつける。僕は全身をロープに縛りつけられ、身動きもできない。
そうしているあいだに、母親と娘は浮き袋を膨らましていた。身動きの取れないままの僕は、さらにその浮き袋に縛りつけられる。
「ならば、お前のようなポンコツの人間は、壊れたポンコツのテレビと同じ目に遭わせるしかないな!」
一家と弁護士と保険屋は結託して、浮き袋に縛りつけられた僕を海に放り投げてしまう。僕が壊れたテレビを投げ捨てたときのように。
浮き袋のおかげで、僕は海に沈むことなく、海流に乗ってどこまでも流されてゆく。後悔と不安、罪悪感と怒り。そういった感情がごちゃ混ぜになったまま、僕は海流に流されてゆく。
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