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村からの帰り道、泣き疲れて眠ってしまった子供をおぶって歩く。
無理もない。歳は十そこそこだろう。こんな小さな体にあれは荷が重すぎる。
自分もそれなりの人生を歩んで来たが、まだ御上がいた分救われていたのかもしれない。今後どうするかはこの子供次第だが、せめてこの先の未来は明るく幸せであることを願うしかない。
宿につくと女将さんが温かく迎えてくれた。
子供を部屋の布団に寝かせ、女将さんにご厚意で一階食堂で夕餉をとらせてもらった。
「あの子、これからどうすんだろねぇ。ウチは子供一人増えるのは大歓迎なんだけどね!!」
「ここにいるのが一番とは俺も思うがね、決めるのは童だ。起きたら聞いてみるさ」
夕餉を済ませて部屋に戻る。静かに寝息をたてて眠る子供を見やり、頭を撫でてみる。すると心成しか子供の表情が和らいだ気がした。
女将さんにはああ言ったが、正直共に旅をするのも悪くないと思っている。子供の面倒なんぞみたことはないが、御上のように自分もこいつにしてやれることはないかと……。それがただの自惚れであることは分かってる。分かっているが、自分の過去と重なり合わせてしまう。
「俺の事なんざどうでもいい。お前の人生だ。お前が選べ……」
それは子供ではなく、自分に言い聞かせるように吐いた言葉だった。
一晩明けて寝起きの一服。子供が目覚めるのを待つ。
丁度一服が終わる頃、子供が目覚めた。
「おはようさん、よく眠れたか?」
子供は目をこすりながら寝惚けたように「ぉはよぉ…」と返してきた。
「まだ寝惚けてんな。無理もない、色々とありすぎて疲れたんだろ。顔でも洗ってから下に来い。」
そう言って手拭いを渡し、自分は1階食堂に下りる。しばらくして子供が食堂に顔を出した。目覚めよりすっきりした顔をしている。
「おや!もう大丈夫なのかい?」
「はい、なんとか」
「そうかい!ならたんとご飯をお食べ!」
女将さんの明るさには助けられる。自分ではあんな風には振舞えないだろう。
子供が朝餉を終えるのを茶を飲みながら待つ。子供は朝餉を食べながら女将を対応しつつも、どうやらこちらをちらちらと気にしているようだった。
自分は気付かないふりをして茶を啜った。
朝餉を終え、女将さんの勧めもあり軽く子供と二人で街を散策することにした。子供ははしゃぐとまではいかないが、楽しそうにしていた。
街を散策している間、子供は俺の手をずっと離さなかった。
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