第一色 — 深き水底の色 —

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夢を見ていた。あの湖の夢を、深く沈んで行く穏やかで静かな夢を……。 夢から覚めた。どれぐらい経ったのだろうか、いまだに体は動かない。 霞む視界の中、炎は見えない。熱くない、痛みも無い、でも意識ははっきりとしていない。また意識が途切れてしまいそう…… 誰か…いる…? 感じる、人の気配を……。聞こえる、足音が近づいてくる……? その気配に音に意識が覚醒していく。叫ぼうとした。声が、出ない?否、口が動かない! 『誰か……!誰か気付いて……!!』 心の中で叫ぶ。  ――――― 僕はここにいる…! ***** 集落を見て回った。どうやら社は集落の丁度中心辺りにあるらしい。 小さな百姓の集落で民家は数える程しかない。しかし農村なだけあって田畑が多く、建物同士が離れている為、全て見て回るのにも一苦労だ。 日が傾き始めた。もう生き残っている人はいないのかと諦めかけた時、ほとんど焼失しているが、僅かに焼け残ったと思われる小さな民家の傍を通りがかった、瞬間、強い輝きが目に入った。 ハッとして急いで民家に駆け込んだ。庭には女性が子供を庇うようにして、血を流し倒れていた。どうやら子供の方も既にこと切れているらしい。奥歯をぐっと噛み締め、家の中へその輝きだけを頼りに探した。 居間だろうか、そこには子供が倒れていた。子供の周りは円を描くように不自然な程火の気配がなく、そこだけ焼け残っていた。血は流してないように見える。どうやら強い輝きは子供のものだったようだ。 「(わっぱ)……っ!?」 子供の方に一歩足を踏み出した、その瞬間まるであの夢の深い水の中に沈んで行くのと同じ感覚に襲われた。  ――――― 俺は、この感覚を知っている 御上の穏やかな笑顔が脳裏をよぎる。 一瞬驚いたが、すぐに冷静になれた。 子供に近付きそっと抱き起す。体温は低いが、呼吸が確認できる。この子供は生きている……否、している。 うっすらとその目を開く子供と目を合わせ、問いかける。 「童、生きたいか?」 その問いに返事は無いものの、腕の中の小さな子供の、今にも閉じてしまいそうなその目の眼差しは強く、輝きはより一層増していた。 「嗚呼、そうか……」 その輝きを見た瞬間、無意識に笑んでいた。
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