第一色 — 深き水底の色 —

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沈んでいく……ごぼごぼと音がくぐもる。まるで水中にいるような、そんな感覚。 ゆっくりと目を開ければ、そこはやはり暗い水の中。体は重く、指一本動かせない。試しに深く静かに息を吸い込んでみたら問題無く呼吸が出来た。きっと夢なのだろうと思う。視線を軽く彷徨わせれば、遠く上の方に揺らめく淡い光が見える。恐らくあそこが水面なのだろう、かなり深く沈んでいるようだ。 しかし何故だろう、不思議と浮上しようとは思わない。体が動かないからという理由だけでは無く、どこか落ち着くというか安心感のような感覚がある。 暗い水の中、"色"が見えない筈のこの目に"色"が見える。この"彩"は…… 窓の障子を開けていたせいで、朝の日差しが顔に当たり目が覚めた。隣を見やれば、子供が小さな寝息をたてて穏やかに眠っている。子供の"彩"は昨日よりも元気な気がする。まるで鼓動のように淡く、しかし力強く明滅している。 「生きてるんだな……」 子供の胸にそっと手を当て、鼓動を感じる。ボソッと呟いた言葉は子供に届くでもなく落ちていく。 「御上もこんな感じだったのかねぇ……。俺を拾った時……」 何とも言えないこの幸福感は何だろう。安心感は何だろう。 それを知るのは、もしかしたらもっとずっと先の未来なのかもしれない。 ***** 温かい…… ハッと気付くと真っ白な世界に一人佇んでいた。 「ここは……?」 声が反響している気がする。見渡す限り白い世界。空も、地面も、ずっと先の先まで……『夢なのか?』と辺りを見回しながらそう思った。 ただ立っていても仕方がないので、適当に歩いてみることにした。 しばらく歩いていると、ふと気が付くと目の前に鳥が佇んでいた。極彩色の美しい鳥。どこか近寄りがたい威厳を湛えたその鳥は、じっと僕を見つめている。 どのくらい経っただろうか、しばらく見つめ合っていた。長い沈黙の後、僕が声をかけようとした瞬間。ばっと鳥が尾羽を広げた。豪華で特徴的な大きな尾羽は、息を忘れてしまう程美しかった。 『そろそろ戻る時間だよ』 頭に直接響くように声?が聞こえた。まるで鈴が鳴るようなそんな…… 唐突に眠気が襲ってきた。刹那、視界が暗転する。
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