第一色 — 深き水底の色 —

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窓枠に肘をつき、外を眺めながら煙管を吹かしていた。吸い込んでは煙を吐き出す。煙は外の賑やかな風に流され消えていく。 そろそろ朝餉でも食べに行くかと立ち上がろうとした時、「ぅ……」と子供が声を漏らした。顔を覗くと丁度目を覚ましたらしい子供と目が合った。 「おぅ、おはようさん」 「ぉ……おはよぅ……?」 「今日はちゃんと喋れるな」 子供の頭を軽く撫で、「今医者、呼んでくるからな」と言って部屋を出た。 ***** 目が覚めたら、顔を覗き込む男の人と目が合った。 「おぅ、おはようさん」 「ぉ……おはよぅ……?」 「今日はちゃんと喋れるな」 「おはよう」が正しいのかは分からなかったが、男の人は僕の返答に優しく微笑み、軽く頭を撫でてくれた。大きくて優しい手。「医者を呼んでくる」と部屋を出て行き、しばらくして医者先生らしき人と共に戻ってきた。 医者先生のような人は僕のすぐ傍に腰掛け、診察を始めていく。軽い触診といくつか質問等をされた。その間男の人は、一歩離れた場所で心配そうに僕を見つめていた。 診察を終えると医者先生は、「問題なさそうです」と言って男の人に一礼して部屋を出て行った。 安心したのか男の人は優しい顔で、落ち着く低い声で話しかけてきた。 「大丈夫そうだな、腹は減ってないか?」 そう聞かれた瞬間、ぐぅ~と腹の虫が鳴る。男の人は一瞬驚いた顔をした。 少しの沈黙を置いて男の人はふっと笑い、「朝餉でも食いにいくか」と優しい笑顔で手を差し伸べてくれた。 差し伸べられたその手をそっと握ると優しく握り返してくれた。それは僕よりもずっと大きく、でも優しく、そして何より温かった。
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