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序色 — 自分だけの"色"を見つけよう —
記憶がある。物心が付いた頃から気が付いた。
この両の眼は”色”を映さないのだと……
世界が物の輪郭のみを残して白黒に見えた。そんな白黒の世界で、ただ一つだけ見えた"彩"がある。最初に見たその"彩"は酷く温かなものだった。人は、この"彩"を一体"何色"と呼んでいるのだろうか……?
覚えている。親を亡くした自分に差し伸べられたその手は酷く大きく、優しく、そして何より温かかった。
それからは意識して目を凝らしたんだ。そして気付いた。
それは生きているものにしか無い"彩"なのだと……
面白い。
その"彩"たちは生き物のおよそ中心で、淡く、儚く、まるで光の玉のように明滅している。輝きは安定せず、生き物によっても違うらしい。そして不思議と同じ"色"が存在しない。皆が皆、違う"彩"を持っている。
より輝きが強いのが人間だった。
しかし、人間は他の生き物と違ってくすんでいる……否、褪せた"彩"しか持っていない。何故だろう……あの人のようにはっきりと"彩"を識別出来ないのは……
そして、自分は一体"何彩"なのだろうか……?
――――― 想像してみよう。
もしも世界の全ての"彩"が燃え尽きた灰のような色になってしまったら……?
見慣れた温かな"彩"、聞き慣れた穏やかで優しい声が聞こえる……
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