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「はぁ」
自室のベッドにうつ伏せで横たわり、枕に顔を埋めながら大きなため息をついた。下校前のことを思い出していた。
あの後、結局今日は送迎があったらしく校門の前で待っていた未来路は母親の車に乗ったので一緒に帰ることはなかった。そのとき母親がクスクス笑ってたのは気のせいではあるまい。
丹としてはあんな恥ずかしいことを言った後だったので一緒に帰らなくて内心では少しほっとしていたが、家に着くとその安心感も消えていた。
「僕、何てことを・・・・・・」
枕から顔を離し、仰向けになって天井を見た。そこには何色になることもできる白色が広がっていた。
発言自体を後悔しているのではない。未来路に生きてほしいと思ったのは丹の本心だった。ただ、その言い方が恥ずかしいだけだ。
「でも、何をすればいいんだろう・・・・・・」
天井を見上げながらぼそりとつぶやいた。勢いで「色を教える」発言をしてしまったが計画も何もなかった。
「はぁ」
もう一度大きなため息をつく。
「ピローン」
ポケットに入れていたスマホから着信音が聞こえた。
丹は画面が見やすいように再びにうつ伏せになって、ポケットからスマホを取り出した。画面の通知には「白川未来路」と書いてあった。今日の帰り際にこれから交流が多くなるのだから連絡先を交換した方がいいだろうということで丹は未来路の連絡先をゲットしていたのだ。
丹はメッセージを開いた。
「青山君、今日はありがとう。青山君がかけてくれた言葉は嬉しかった。言い方は少しあれだったけどね。それでも、嬉しかったのは本当だよ。だから私は青山君を信じてみるよ。私に手を差し伸べてくれた青山君なら、もしかしたら本当に色を教えてくれるんじゃないかと思ってる」
メッセージにはそう書いてあった。
丹はメッセージを何度も読み直した。信頼されていることが嬉しかった。未来路の思いを変えることができて嬉しかった。
それと同時に自分の責任感を強く感じていた。
「よし」
自分の心を鼓舞して決意を新たにする。
そして、指を走らせて素早くメッセージを入力して送信した。
「白川さん、今度の日曜日あいてる?」
既読の文字はすぐについた。と思ったら返信もすぐに返ってきた。
「あいてるよ」
「じゃあ、学校の前に朝の十時に集合できる?」
「大丈夫だけど、どこに行くの?」
「お楽しみ」
「わかった。楽しみにしておく」
そこでメッセージのやりとりは終わった。
丹は自分のスマホを強く握りしめていた。未来路に色を教える初手の準備が整った。後は丹がどれだけ頑張れるかの勝負だ。
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