第一話

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 今日は始業式があったため昼で終わりだ。  授業が終わると部活のない(あかし)はすぐに帰り支度をした。  帰り支度の途中で碧にいつものように「マネージャーになるか?」と言われて断る恒例行事を行った。  校門に向かうと結構多くの生徒が下校していた。その中に明石の目を引く生徒がいた。丹はその生徒に見つからないように物陰に隠れた。  未来路が校門を出て下校していた。  (えっ、そっち?)  丹は意外感を覚えた。校門の前はT字路になっているが、ほとんどの生徒は住宅街方面と駅方面のまっすぐの道と右の道に進む。  だが、未来路は左側の道に進んでいた。確かにそちらからでも住宅街には行けるが、その道は旧道なのでとても遠回りになってしまう。  にもかかわらず未来路は左を選んだ。  丹はそれが気になって仕方なかった。故にこっそりと後ろをついていくことにした。  これで少しでも未来路のことを知ることができれば自分の謎も解けるのではないかと思っていた。  丹は十分くらい歩いていたがこれと言って収穫はなかった。あると言えばこの道にほとんど信号がないということくらいだった。旧道なので当たり前と言われれば当たり前だが。  さらに五分くらい歩いて丹はもう飽きていた。この道にはほとんど人がいないので人とあまり関わらない未来路はこちらの道を選んでいるのだろうという結論にいたっていた。  もう、後をつけるのはやめて帰ろうとしたとき異変が起こった。  異変というほどのことでもないのだが未来路が急に立ち止まったのだ。視線の先では道路工事が行われていた。  工事がされていると言っても片側だけなので信号に従って進めば何も問題はない。  しかし、丹が異変だと思ったのは未来路が青信号にもかかわらず立ち止まっているからだ。  (どうしてだろう?)  後ろから車が来ているのであれば先に行ってもらうために立ち止まるのもわかるが今はそんな状況ではなかった。  未来路は信号を見ずに車が来ないかどうかだけ確認している。気づかれないように物陰に隠れながら進んでいたため丹には気づいていないようだ。  そして入念に車が来ていないのを確認すると片側に出た。  こちらの信号が赤に変わったにもかかわらず。
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