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「何してるんだよ!」
丹は大声で叫んだ。と同時に物陰から飛び出して未来路に駆け寄った。
「えっ?」
その声に反応して後ろを振り返ると、急いで自分の方に走っている丹が見えた。
「青山く・・・・・・わっ!」
丹を呼ぼうとしたが、その前に丹が未来路の手を強引に引っ張ったためバランスを崩した。
「・・・・・・ブーン!」
二人が倒れそうな勢いで片側によると、猛スピードで車が通過した。見たところ走り屋のようだ。信号が青になったためアクセルを全開にしてきたのだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
丹は息があがっていた。気持ちが焦っていた分呼吸をしていなかったのだろう。
未来路は丹のおかげで命拾いしたが、それよりもまずどうして丹がここにいるのかが気になった。
「青山くん、どうし・・・・・・」
「な、なんで出たりしたんだ!はぁ、はぁ、信号が赤だっただろ!はぁ」
途切れ途切れの息づかいで未来路を叱った。
その様子に未来路は少し体を萎縮させた。
「死んでたかもしれないんだぞ!」
息が徐々に戻ってきた。だが、先ほどの身くっろの行動への怒りは収まらなかった。
「信号が赤になってただろ。なんで出たんだ」
丹は信号を指さした。未来路の顔も信号の方に向くがすぐにうつむいてしまった。
その反応が反省しているようには見えなかったので丹は余計に腹を立てた。
「そもそも信号を見てればすぐに通れただろ!信号がわからないなんて・・・・・・」
「うるさい! うるさい! うるさい! うるさい! うるさい! うるさい!」
丹は言葉を句切るしかなかった。未来路が耳を塞いでうつむいたまま怒鳴りあげたのだ。
こんな未来路の姿は見たことがなかった。
未来路は顔を丹の方に向けた。その目に涙が浮かんでいるのが見えた。
「青山くんに何がわかるの! こんな境遇に生まれてきた子の気持ちが青山君にわかるわけ! 好きな色は青色、ふざけないで! 青がどんな色かもわからない人間の気持ちがわかる!? 信号がわからない人間はこの世にいない?! 何も知らないくせに!」
ものすごい勢いだった。息をしていないのではと思うほどの間で言葉を続けた。
その勢いに丹は言葉を失ってしまった。
二人の間には未来路の荒れた息づかいだけが聞こえていた。
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