3人が本棚に入れています
本棚に追加
第二話
「丹、寝不足か?」
机に突っ伏している丹に向かって、碧が荷物を下ろしながら聞いた。
丹はもっそりと起き上がり、後ろを振り返ってほとんど開いていない目で碧を見た。丹の目の下に大きなクマができていた。
家に帰ってから丹は未来路の病気について調べた。インターネットで調べてわかったことは未来路の言ったこととほとんど一緒だった。
色覚異常の中でも特に重度でまるで白黒映画の中のような世界が目の前に広がる。後天的な病気ならば今までの経験からそれなりに脳が勝手に色を補正するため多少は色づくが、未来路のように先天的なものだとそれが全く起こらない。
光の強弱にも鈍感になってしまい、夜だと一人で歩くことができない。それはトンネルの中でも同じだ。
さらに視力も徐々に衰えてしまい、早い人だと発症から一ヶ月、どれだけ遅くとも発症から二十年で失明してしまう。未来路はこの中では遅い方に当たるので、まだいい方なのかもしれない。
そして、この病気を治す方法は未だにできていない。進行を遅らせる薬や手術が最近になってようやく開発されたようだが、費用が非常に高額で一般人が出せる金額ではなかった。
そのことを知ってしまい丹は悲しいような、苦しいような、なんとも形容しがたい思いに駆られてしまった。それ故昨日は寝ようにも寝られなかった。
「丹・・・・・・顔色が悪いぞ。保健室行くか?」
碧が心配そうに聞いてきた。
その言葉を聞いて、丹は保健室行くのとは別のことを考えた。
「顔色か・・・・・・顔色がわからなかったら、どうやって気分が悪そうだと判断するのかな・・・・・・」
碧の机に顔を埋めながら弱々しくつぶやいた。
「あか・・・・・・帰るか?」
これはもう学校は無理なのではないかと思わざるを得ない姿だった。
碧は返事もなく、へたり込んでいる丹を指でツンツンとつついた。
その様子を少し離れた席で未来路が見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!