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十二年
秋深し。十一月の半ば。その人はクラスメイトに笑顔を向けながら自らの名前を名乗った。
「高杉海斗です。多分またすぐに転校しちゃうけど仲良くしてください」
その時、俺は小学ニ年生。転校生なんてはじめて見るものだから物珍しさも相まって休憩の時間にすぐさま海斗に声をかけた。
「なぁなぁ海斗ってゲームする?バスケ好き?読書は?俺は絵を描くの好きなんだよ。海斗は何が好き?」
いきなり矢継ぎ早の質問を浴びせる俺に海斗を囲んだ取り巻きが眉をひそめたのが俺には分かった。
「ねぇまず名前教えてよ?それからでも遅くないと思うけど?」
笑顔を崩さない海斗に俺はしまったなぁと後悔したが、すぐに考え直す。
「俺は拓海。海斗と同じく海の文字が入っているんだよ!」
「拓海……。よろしくね。ゲームするしバスケも好き。読書はそこそこ。絵は描くのは苦手だけど見るのは好きだよ」
海斗は一気にまくし立てた俺の質問に答えてくれた。
「海斗、すげー!」
「拓海が聞いたんじゃないか」
俺はどちらかというと目立ちがり屋で出しゃばるタイプだが、その一瞬で海斗は俺のお気に入りになった。
「なぁなぁ」
俺が海斗のあとを金魚のフンみたいに追いかけ回すのは先生も予想外みたいだった。
「拓海がそんなに海斗を気に入るなんてな。ガキ大将を卒業したのかい?」
「違わい!海斗はいつ転校するか分からないんだ。だったら楽しいことをいっぱい一緒にしたほうがいいだろ?」
先生は俺のことをガキ大将なんて呼ぶけど、誰かをいじめたりとかそんなダサいことするかよ。
「なぁなぁ海斗。どんなゲームするの?」
「モンスター集めするやつ好きだよ。もう少しで図鑑埋まるんだけどさ」
「すげー!海斗、博士じゃん!」
「そんなことないよ。転校が多いから色んな人とモンスター交換できただけなんだ」
「なぁなぁ見せてよ!」
「学校には持ってこれないよ」
「じゃあ見に行く!」
そんな調子で十一月を終えたものだから、俺と海斗はクラスメイトにコンビとして認識された。
海斗は色んな場所を巡り歩いたから物知りでもあった。博識って言うの?性格も穏やかで優しいものだからクラスの中心は俺と海斗になった。もともと俺が中心にいたようなものだけど、海斗と肩を並べるのは悪い気はしない。
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