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序章 2
星を見るのが好きになったのは7歳のころだった。
父に連れられて行ったキャンプ場で、ぼんやりと大量の瞬きを眺めた。あれはふたご座、あれはオリオン座と一つ一つ教えてくれた。初めての天体観測は冬になりたての時期だった。手が寒くて寒くて仕方がなかったけれど、見上げた空の綺麗さは格別だった。寒さがひかりをより一層鮮明なものにさせているように感じられた。
灯里、という私の名前も、星が好きな父がつけてくれた名前だ。
「人は亡くなったら星になるんだ」
そうして何万光年離れた彼方から、あかりを連れてくると教えてくれた。
父はそう言った後、私の目の前から消えた。
私の家はそれなりに大きい家で、狭いながら庭があった。2階の私の部屋にはえ極寒の冬の夜はココアを両手に抱え、真夏の蒸し暑い夜は麦茶で喉を潤しながら、私は外に出て星を眺めた。たまに事典で星座の位置を確認した。母はそんな私に、小学生用の天体望遠鏡を買ってくれた。私はそれが嬉しかったけれど、今にして思えば私に対する申し訳なさから母が与えてくれたものなのかもしれない。
母が再婚相手を連れてきたのは、天体望遠鏡を私にくれたすぐ後だった。
私は家の敷地外にいる時間を増やした。庭やベランダだけではなく、公園や自転車を走らせた広い駐車場で星を見るようになった。最初は肉眼で見ていたけれど、それだけでは物足りなくなって、母からもらった望遠鏡を担ぐようになった。折り畳めて、自転車にの荷台に乗せられた時はいたく感動して、なんで最初からこうしなかったんだろうと不思議な気分になった。
あれはカノープスだろうか。あれはベテルギウスだろうか。……父はどの星になったのだろうか。
父を見つけたいとも思った。
同じぐらい、早く父のように星になりたいと思った。
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