獣との遭遇

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獣との遭遇

 俺は、どこにいるのだろうか。ここは、死後の世界なのか。自らの命をたった報いなのか、死ぬことのできない、細胞の再生の能力で、永遠に苦しめられるのだろうか。とりあえず、小屋から出て、周囲を調べよう。  小屋から出ると、そこは、周りには何もない広い草原だった。夜だけど、月の光で、周りを確認することができる。  そして、ここは確実に、俺がいた世界とは、違うようだ。その証拠に、草原には、見たことない獣がいる。体調は1mくらいの狼に似た獣だ。狼と違うところは、鋭い大きな牙と、三つの目だ。あんな獣は見たことも、聞いたこともない。  獣は、俺に気づいたのか、こちらを睨みつけ、静かに近寄ってくる。たぶん、逃げても無駄だろう。  獣は、じわりじわり、近寄ってくる。俺は、ゆっくりと後退りしながら、獣の動きを観察する。俺は死ぬことはない。だから死えの恐怖はない。しかし、死なない代わりに、無限の痛みの苦痛はある。  獣は、俺に少し警戒をしているのか、すぐには襲ってこない。しかし、俺を追い詰めるように、近づいてくる。俺は、覚悟を決めた。逃げ場はない。なら戦おう。あの獣の目を潰せば、なんとかなるだろうと思った。  俺は、退くのをやめて、拳を握り、獣の動きをじっと観察した。獣が、俺の近くへと、にじり寄ってきた。口元からよだれをたらし、大きな牙が剥き出しになっている。3つの鋭い目は、俺を睨みつけている。俺は先に仕掛けた。俺は拳に力を入れて、獣の目を目掛けて、パンチをした。  獣は俺の拳ごとかぶりつく・・・そしてものすごい力で、俺の腕を噛みちぎった。  「ぎゃーーーーー」  俺の悲鳴が、静かな草原に響きわたる。俺はすぐに腕を押さえた。できるだけ、血を流すわけにはいかない。血の量が減ると、再生の速さが落ちるのがわかっている。再生の速さが遅いほど、苦痛の時間が長くなるのである。  俺の右腕を獣が、噛み砕いている、俺の右腕は、肘から先はなくなり、骨がむき出しになっている。激しい痛みのため、涙が溢れ出る。苦痛を耐えるために歯を食いしばり、必死に腕を押さえつける。  獣は、俺の右手を食べ尽くし、骨をしゃぶっている。これは、逃げ出すチャンスなのかもしれない。俺は、無我夢中で逃げ出した。どこへ逃げればいいのか、わからない。しかし逃げるしかない。  どれくらい、走っただろうか。俺は草原を抜けて、森の中に入っていた。幸いなことに、獣は俺の腕で満足したのか、追いかけてこなかった。  俺は、木を背もたれにして、座ることにした。そして、右肘にかぶりついた。これ以上血を流すわけにはいかない。走って逃げていた時は、痛みも忘れるくらい、無我夢中だったが、獣から、逃げることができた安心感から、右腕の痛みが、全身を駆け巡る。のたうち回りながら、苦痛と戦っている。  何時間も、苦痛との戦いは続いた。  俺の腕が、再生する頃には、もう夜が明けて、少し、陽の光が差し込んでいた。    俺は、腕が再生したので、明るい方向を目指して、森を出ることにした。また獣に襲われるかもしれないからである。そして、町を探そう。ここが、死後の世界で、獣が蹂躙する世界なのか、それとも、異世界に転移したという可能性も考えられる。    おれは、森から抜けて、また小屋に戻ってきた。俺は、校舎から飛び降りて、この小屋で目覚めた。もしかしたら、何かヒントがあるのかもしれないと思った。  昨日は、外の様子が知りたくて、慌てて、外に飛び出したが、小屋を探索するのも必要だと感じたのである。しかし、小屋の中は、小さな部屋になっていて、台所も何もない。人が住むように作られた感じではない。ただ、何もない部屋であった。  俺は、手がかりを掴めず、小屋を出て、周りを見渡した。昨日は暗くて、よく見えなかったが、この草原は少し高台の丘にあり、下を見下ろすと、1軒の家が見えた。木製の小さくみすぼらしい家だ。  とりあえず、人が住んでいるか、確かめよう。そして、人がいたら、話しを聞いてみよう。しかし、言葉が通じるか、心配だ。  俺は、草原を駆け降りて、家を目指した。思ったより近くにあったみたいで、すぐに辿り着くことが、できたのである。  家の周りを観察すると、畑があり、ここで生活しているのがわかった。俺は、家の玄関まで行くと、扉を叩いて、声をかけた。  「すいません。どなたかいますか」    反応がない。しかし、家からは、人の気配を感じる。  「どん・どん・どん」  「すいません。開けてください。お話があります」  いきなり、見ず知らずの人が、開けてくれと、言っても、開けてくれないのが、当然なのかもしれない。こんなところに、住んでいるのだから、人が訪れることは、少ないのだろう。     「すいません。道に迷って困っています。話しを聞いてください」  やっぱりダメなのか・・・・  「ガチャ」  「何かようか」  家からは、身長180センチくらいの、大柄の中年男性が現れた。そして、言葉は通じるみたいだ。  「しつこくて、すいません。道に迷ってしまいまして、この辺に大きな町はありますか」  「町なら、ここから、東の方に向かえば、歩いて1時間くらいで着くはずだ。目の前の道をそのまま進めばいいだろう」  「ありがとうございます」  「それより、お前は旅人か」  「はい。そうです」  俺は、話しを合わせることにした。それに旅人なら、道も分からなくても、疑われることもない。できるだけ、不審人物だと思われないようにしないと。  「そうなのか、旅は大変だろう。きちんとご飯は、食べれているのか?よかったら、朝ごはんでも、食べていくか。丁度、朝ご飯の準備をしていたところだ」  見た目は、大きくて、怖そうな人に見えたが、本当は、いい人なのかもしれない。いつもの俺なら、人見知りも激しく、知らない人と、ご飯を食べるなんて、ありえなかったが、人の優しさに触れて、ご飯を誘ってもらって嬉しかった。  「よろしいのですか」  「ああ、1人で食べるより、2人で食べた方が、楽しいというものだ。それに旅の話しでも聞かせてくれ」    旅の話しかぁ・・・・適当に誤魔化して、逆にこの世界の話しを聞き出そうと思った。  「はい、僕もこの辺の町のことを教えてください」  「ああ、なんでも聞いてくれ。さあ、入りなさい」  俺は、男の家に入った。お世辞にも、綺麗な家とは、言えないが、男の一人暮らしなら、こんなものなのかもしれない。そして、椅子に腰掛けて、朝食を持ってくるから、待つように言われた。  この部屋には、テーブルと俺の座っている椅子だけである。とても質素な部屋だ。  それにしても、なかなか男がやって来ない。今から、朝食を作っているのか。しかし、急かすわけにもいかないから、俺は、おとなしく待っていた。  しばらくすると、俺は、何か背後から迫ってくる気配を感じた。俺は背後を確認した。そこには、先ほどの、大柄の男性が立っていた。手には、食事ではなく、大きな斧を持っていた。  男は斧を振りかざし、俺の頭を切り落とした・・・      
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