門番

1/1
前へ
/24ページ
次へ

門番

 「おいチェイス、町に向かって走ってきているのは、死刑執行官じゃないか」  「そうだな、でも今日は、あいつの仕事は、ないはずだ。何しにきたのか」  チェイスとサムは、アビスの町の門番である。町に入るには、身分証が必要になる。身分証のない者は、奴隷か名無しである。名無しとは身元不明の要注意人物であり、名無しのほとんどが、町を捨てて、森で暮らす、盗賊の類の犯罪者である。  「大変だ、化け物があらわれた。町へ入れて欲しい」  「化け物だと、それはお前のことじゃないのか?血塗れで、何かやらかしたのか」  「いや・・これは違うんだ。俺を襲いにきた、男の頭を切り落とした時の返り血だ」  「低級平民に襲われたのか、返り討ちは、認められているから、罪には問われないだろう。報告の義務はないから、帰れ。お前は、仕事以外では、町に入ることができないのは、知っているだろう」  「違うんだ。そいつは頭を切り落としても、死なないんだ。足も切り落としたが、無駄だった」  「ついに、お前も頭が、いかれてしまったか」  「信じてくれ。このままあの化け物を放置したら、町が危険になる」  「頭を切り落として、生きてる人間などいるはずがない。本当なら、その化け物を連れてこい。俺たちは、お前の妄想に付き合っている暇はないんだ」  「・・・・どうなっても知らないからな」  そういうと、死刑執行人は、諦めて、帰って行った。  「ついにあいつも、おかしくなったか」  「仕方ないだろう。低級平民に、いつ襲われるかもしれない恐怖で、おかしくなるのは、いつものことだ」  「じゃぁ、そろそろ仕掛けるか」  「そうだな。この前の上玉の女の家族に、教えてやるか。あの女は最高だったしな」  「お前もひどい奴だな。お前があの女のガキを、馬車に轢かれるように、蹴飛ばしたんだろ」  「ああ、以前からあの女は、狙っていたんだ、しかし、貴族の目にとまって、奉公に出されたから、もう、無理かと諦めていたが、あの女は、一年で奉公を終えて、無事に帰ってきた」  「貴族の奉公に出されて、無事に帰ってくるのは、珍しいよな。あんな上玉の女なら、性奴隷にされて、飽きたら、拷問好きの貴族に売り飛ばされて、死体で帰ってくるが普通だからな」  「あの女は上手いことやって、無事に帰ってきたのだろう。俺にとっては、願ってもないチャンスが舞い込んできたけどな」  「あの女とやりたくて、ガキを馬車に向かって、蹴飛ばしたのか」  「ああ、死刑になれば、俺ら、下級平民は、何をしても許されるからな。俺が1番であいつにぶち込んでやったぜ。嬉しそそうに、泣きながら、喘いでいたぜ」  「あれがか、どうみても、嫌がって、泣き叫んでいたように見えたけどな」  「そうか。でも次にお前が、やっただろ」  「それは、俺は、泣き叫ぶ女とするのが、興奮するからな。今でも思い出すだけで、立ってしまうぜ」  「旦那が遠くから、泣きながら見ていたよな。あのあと、他の連中にも犯され続けて、途中であの女、気を失いやがったから、俺が、あいつの膣と肛門に棒を突き刺してやったぜ。その時の旦那の表情は最高だったぜ」  「確かに笑えたな」  「しかし、あいつらにも、ストレス発散させないと、俺らに復讐してくるかもしれない。だから、町を出る許可を与えて、復讐の機会を与えるのも、俺たちの仕事だ。それに、最後に頭を切り落として、殺したのは、あいつだからな」  「そうだな。使いの者を出して、死刑執行官の狩を認める通知を出してやろう」  なんとか、頭は繋がったみたいだ。頭を再生するよりも、繋げた方が、再生する時間が早いと判断した。右足もしばらくすると繋がるだろう。  どうやら、俺の体は、トカゲの尻尾みたいに、どこを切り落としても、再生するが時間がかかる。しかし、切り落とされた、部分を繋いだ方が、時間が短縮できるみたいだ。時間短週は大事である。時間が短いほど、苦痛の時間も短縮することが、できるからである。  あの男は、仲間を連れて、戻ってくるのだろうか。確か、町へは1時間かかると言っていたから、往復で2時間になる。あれから2時間くらい経っているので、もうそろそろ、戻ってくるのかもしれない。  しかし、この血塗れの格好だと、町へ入れないだろう。あの男が、俺を殺そうとしたのは、血塗れの服がいけなかったのだろう。確かに、血塗れの服の男が現れたら、警戒するのはあたりまえだ。しかし、頭を切り落とすほどのことなのか?  この世界は、用心しないと、危ないな・・・死ぬことはないけど。  俺は、男の服を借りることにした。大きな服だが、小さいよりかはマシだ。裾を折り曲げ、袖をまくれば、さほど違和感もない。食料もあるみたいなので、少しもらうことにした。  俺は、準備を整えて、この家を後にした。そして、とりあえず町へ向かおう。道なりに行くと、あの男に出くわすかもしれないので、少し道を外れて向かうことにした。  俺は、あの男と出くわすことなく、町の近くまで、たどり着くことができたのである。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加