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囚われる
「やっと目が覚めたのか」
俺は、睡眠薬を飲まされ、牢屋に監禁されたようだ。そして、動けにないように、両手両足は縛られている。牢屋には、俺の他に、30代くらいの男性がいた。
「あの・・ここはどこですか」
「ここは、宿屋の地下室だよ。外観は、宿屋になっているが、実態は、奴隷オークション会場に持っていくための、保管場所だよ」
「僕は、奴隷として、売られるのですか」
「ここに連れて来られたなら、そういうことだろう」
俺は、あの男に騙されて、奴隷として、売りに出されるらしい。頭を切り落とされた、次は奴隷である。この世界に来てからロクなことはない。日本にいた時の生活のが、まだマシだったかも知れない。自殺なんて、するんじゃなかったと後悔した。
「奴隷になったら、どうなるのですか」
「それは買い手次第だよ。君みたいな、若い男なら、男性同性愛者に、買われるかもしれないね。個人所有になるか、店で働かされるか、どちらかだよ」
俺は、まだ童貞なのに、女性を知る前に、男性にやられてしまうのか・・
「気を落とすなよ。良い所有者に買われたら、大事にしてもらえて、他の奴隷よりかは、自由に過ごせるよ」
「そうなのですか・・・あなたはどのような奴隷になるのですか」
「男の奴隷は、ほとんどが、強制労働をさせられるよ。そして、長くても、5年以内には、殺されてしまうよ」
「なぜ、殺されるのですか?」
「強制労働は、基本、炭鉱での採掘や、町の汚物の回収など、汚くて、辛い仕事になる。そして、奴隷を1人1人管理するのは、大変だ。隙を見て逃げる者もいるが、1番厄介なのは、奴隷同士が手を結んで、暴動を起こすことだ。それを防ぐために、5年を任期として、殺処分される。奴隷として、一生過ごすより、殺処分される方が、幸せと感じる者も多いけどね。それほど、奴隷の扱いは、ひどいものだよ」
「そうなのですか・・・しかし、なぜあなたは、奴隷になったのですか」
「それは・・・妻が死刑の判決を受けてしまって、広場で全裸で縛らたんだよ。そこで、下級平民のおもちゃにされてしまってね・・・助けに行きたかったが、妻を助けにいけば、俺の親族が死刑になってしまう。必死で我慢したが、やつらは、妻の膣に棒を突きさしたんだ。俺は・・・やめてくれと叫んでしまった。俺は、神聖な裁判の判決を否定したと判断され、その場で、衛兵に捕まり、低級平民から奴隷へと格下げになってしまった」
「そんな・・あまりにも酷いじゃないですか」
「低級平民とは、そんな扱いなんだよ。君は、この町の人間じゃないみたいだから、そんなふうに感じるのだよ」
「僕が、この町の人間じゃないって、知っていたのですか」
「知らないさ。でも、この町の人なら、そんなこと聞いてこないからね」
「この町では、当たり前のことなんですね」
「ああ、そうだよ」
「あの、一つ聞いてもいいですか」
「なんでも聞いてくれよ」
「さっきから言っている、低級平民とは、どういう意味なのですか」
「低級平民は、この町の独自の呼び名だよ。君も知っていると思うが、この国の階級制度は、王族、貴族、上級平民、中級平民、下級平民、名無し、奴隷の順で身分の序列が決まっている。しかし、この町では、平民は、家族の誰か1人でも、貴族に対して、不敬罪で訴えられ、裁判で負けたら。家族全員が身分落ちの刑になるんだよ。身分落ちになると低級平民になり、住む場所も変わり、仕事も限られた仕事しかできなくなるんだよ」
「そんな・・無茶苦茶な」
「それは、平民は、絶対に貴族に逆らえないように、するためだよ」
なんて、やばい町に俺は、来てしまったのだろう。この町では、貴族が絶対であるみたいだ。逆らうと、低級平民になり、汚い地域で、汚い仕事しか与えられないのである。
平民は、貴族に怯えながら、生きていくしかないのである。それに比べたら、俺は、なんて情けない人生をおくってきたのであろう。
ここの世界の人は、逃げる事も許されない。町から無断で逃げて、捕まれば、死刑か奴隷かのどちらからしい。
「ところで、君はなんで奴隷になったのかな」
「僕は身分証を持っていなかったので、この宿屋に行けば、偽造の身分証を作ってもらると聞いて、ここに来たけど、騙されて奴隷になるハメに、なってしまったみたいです」
「あの門番の仕業か」
「知っているのですか」
「チェイスという下級平民の門番のことだろう。目撃者によると、あいつが俺の息子を蹴飛ばして、馬車に引かせて、妻を死刑に追い込んだのだよ。あいつは、以前から、妻を狙っていて、いろいろと悪巧みを考えていたみたいだ。そのため、妻を守る為に、良心的な貴族の奉公に出させて、一時的にしのいだが、帰ってきたら、この結果だ。あいつだけは絶対に許せないが、俺たち低級平民は、何もできないのだよ」
「悔しいですよね。僕もあいつはゆるさない」
「あいつの悪事を、訴えることができればいいのだが、低級平民には、裁判権は、ないので何もできない。しかし、よその町からきた君なら、訴えることができるかもしれないよ」
「でも僕は、身分証がないので」
「そうだったね。誰か身元保証人になってくれる貴族の知り合いがいれば、下級平民にはなれるのにね」
「そうなのですか」
「ああ、いい貴族に買われて、チャンスがあれば、下級平民になれるかもしれないね」
「いいことを聞きました。少し希望が持つことができます」
「ただ、一度奴隷になって、奴隷印を押されてしまったら、裁判で勝つことはできないんだよ」
「そうなんですか。でも希望は捨てずに、あの門番に復讐できるように、奴隷になっても、諦めません」
俺は、この男性に、この町のこといろいろ聞いた。聞けばきくほど、常識を超えた内容に衝撃を受けた。俺は、これからどうなるのだろうか。
奴隷オークションは、週に3回開催される。そして、今晩がその日である。
俺はどんな人に買われ、どのような奴隷にされるんか、考えると怖くて震えが止まらない。こんな気弱な俺に、門兵に復讐などできるのであろうか・・・
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