イブサンローラン

6/6
前へ
/6ページ
次へ
マリーの旦那はいびきが凄かった。マリーは、男とはそういうものだと思っていた。だから、サンローランが静かに、波音を一切たてずに落ちたのに気づかなかったのだ。サンローランはカウチに横たわりものの数秒で眠りにおちた。マリーはそうとはしらず声をかけた。 夕飯できたわよ。ビーフシチュー特製よ 返事がない。あれ、と思い様子を伺いにいくと死んだように眠りこけるサンローランがいた。 あらあら。 マリーは呆れた。 連日の疲れがたまっていたのだ。サンローランに悪気はない。マリーはなぜか少し淋しくなり、サンローランのひたいに軽くキスをしようと顔を近づけた、とたん、サンローランは無意識でマリーを払いのけた。眠っていた。だが、女性への警戒心が無意識の領域を支配していた。マリーははっとした。何をしようとしてしまったのかと恥じた。そして毛布をかけてあげると一人寂しく夕飯を食べた。 朝がきた。マリーが、少々他人行儀になっているとサンローランは思った。何があったかはさっぱり覚えていなかった。そして鍵を手にいれると、深く感謝の言葉をのべ、自分の部屋にかえっていった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加