イブサンローラン

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舌の上でとろけていくホワイトチョコはかすかにアーモンドの風味をまとっていたがあまりに甘い砂糖の塊にミルクを惜し気もなくつぎ込んだあとカカオをほんの少し混ぜてから煮詰めたような味がした。サンローランはコーヒーをくださいと頼んだ。マリーはあらあら甘すぎたのねと楽しそうに豆を焙煎し、ポットのお湯を器用に注いでカップをサンローランに手渡した。頭がキンとなるチョコだった。 あの、マリーさん、今日はここで寝ていいんですか? 勿論よ すみません。 そこのカウチでいいかしら。 はい。 夕飯はまだ? はい、しかしご馳走になるわけには、、、 いいのよ、どうせこれからご近所さんなんだもの。遠慮しないで マリーはどこまでもお人好しで、危機感のうすい人だった。いやしかし、マリーにはほんの少しの下心があった。若い美男子を連れ込んで、何も無いわけがない、せめて好意をこめた挨拶のハグくらいはと思っていた。
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