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0話 退屈な世界 そして転生
神奈川県在住のこの男の名は七瀬 陽介
来年で妖精になれる39歳 童貞だ
彼女は1度できたことがあるがゴールインする前に別れを告げられた。
~~
「あ〜 くそっ 勝てん」
1人暗い部屋の中で呟いた。
昔からやりこんでいるゲームだった。
『ミスティカルオンライン』いわゆるMMORPGだ。
友達もおらず彼女もおらずゲーム内のフレンドもおらず
パティーを組んで倒す強ボスをソロで倒そうとしていた。
だが無理だった…
と言っても弱い訳ではなく廃課金者で1vs1のpvpではランキングに毎回名を馳せる猛者だ。
つぎ込む金を稼げるだけのそこそこ給料のいい会社に務め、彼女が居ないこと以外は何事もなく生きていた。何も無さすぎた…
退屈だった。だからゲームに逃げてやりがいを見つけようとした。
だが、ゲームして何かあるのか?と終いにはなぜ生きているのか?とまで思うようになっていた。
日本のため、みんなのためと世間は言うが、聞く度に自分が飼い慣らされた犬のように思えた。
そしてまた何も生まないゲームに逃げた。
酒みたいなものだ。現実逃避をした。
~~~~
次の休日俺は新作のゲームソフトを買いに行っていた。
これこそは退屈ではなくなるのではと思い、
絶対に買おうと決めていた俺の中の期待作だ。
早足で家から1番近い電気屋に行った。
無事買うことが出来、すぐに家に向かった。
家の近くの小さな信号
交通量は少なく普段なら信号無視しているところだ。
だが今日は違った。
なぜならその信号には昔唯一付き合っていた彼女、亜紀がいた。
話しかけようか迷った。何かあるかもと思ってしまう夢見る妄想野郎の俺がひょこっと出てきたからだ。
だがその夢は一瞬で壊された。
亜紀はは子供を連れていた。
まだ1歳を超えて歩けるようになったぐらいの赤ちゃんだ。
結婚して子供を産んでいたのだ。もっとも結婚しているかどうかは不明だが。俺の目には結婚していると映った。
シングルマザーかも、とか言う妄想野郎も隠れて出てこない。
そして何より俺は休日に1人でゲームの入った袋を持ち、話しかけるのは恥ずかしかった。
気付かれないようスマホを見ていた。といっても何かをしていた訳でもなく、ツ○ッターを眺めていただけだ。
すると女性の悲鳴が聞こえた。
何事か!?と思い顔を上げると、亜紀の悲鳴だった。
亜紀の子供が道路に飛び出していた。一生懸命に右手から離れた風船を追っていた。
亜紀が目を離していたのだろう。
災難なことに右からは車が来ていた。
ヤバい
俺は助けようと思った。だが恐怖心が勝った。
足がすくんで動かない。
亜紀は息子を助けようと道路に出た。
車はすぐそこだ。
目の前で2人も車に跳ねられて、俺は見ているだけなんてことはダメだ。
ではどうする?
そう考えているうちに俺の体は動いていた。
亜紀に対してはもう未練も何も無かったが、俺はこの状況で見ていることは出来なかった。
運動神経は悪くはなく高校まで野球をしていた。
だが社会に出て運動は全くと言っていいほどしていなかった。
足が痛かった。腰も痛かった。
そんな事はどうでもよかった。
俺は止まらなかった。
「クソっ」
亜紀は座って赤ちゃんを抱えていた
亜紀の足は動かなかった。
もう無理だと思ったのだろう。そして怖かったのだろう。
せめて赤ちゃんだけでもと抱えていた。
『ドンッ』
俺はギリギリのところで亜紀を押した。
思いっきり押した。多分間に合った。
そして俺は…なにか大きな衝撃と共に軽々とどこかに飛んでいく感じがした。
大きな音と共に全身に激痛が走った。
どれぐらいの時が経ったのだろうか。何故だか痛みが消えていく感じがした。
力を振り絞り目を開けると人だかりができ、すぐそばで亜紀が助けを呼んでいた。
俺の顔を見た後一瞬驚いたかのように目を広げ泣き出した。
声を掛けようと思ったがそんな力は俺には残っていなかった。
俺は死ぬのだろうか、
段々と意識が遠のいていき、
俺は意識を手放した…
~~
『……っ』
俺は一面真っ白の部屋にいた。
どこまでも続いているような変な部屋だ。
意識はあり目は見えるが感覚がない。
そして自分の体が見えない。
『死んだ…のか?』
喋れた
と言うより音が出た
どこからか声が出た
すると半透明の足で幽霊のような女がこちらに向かって歩いてきた。どこから現れたのだろうか、不思議だ。
20代半ばぐらいだろうか。
格好は幽霊という訳ではなく神々しい服装をしていた。
その女俺に近寄り俺を見つめた。
『…………………』
『…………………』
沈黙の時が流れた。
『えっと…どなたですか?』
『…驚かないのですね。』
『え?』
『大体ここに来る人は私の姿を見て驚くのですよ。』
『は、はぁ、そうなんですか』
『すみません、どうでもいい話でしたね。それよりも言うことがありました。あなた七瀬 陽介は地球の世界線において死にました。』
え?俺死んだの?なんか死んだって軽々しく言われた気がするんだが…
『えっと…すみません。なぜそんな事を?というかここはどこですか?あなたは誰ですか?』
分からないことが多すぎて頭がこんがらがっていた。
『ちょっと待ってください。一度にそんなに聞かれても答えられませんよ。』
半透明の女は俺の質問に対し一つ一つ答えてくれた。
その半透明の女の名はミカエルと言うらしい。
そしてここは死後の世界、魂だけが生きれる特別な領域なんだとか。そしてミカエルは神に仕える天使らしい。
そしてすごいことを言われた。
『この死は2人の命を助け勇気ある死としてタナトス様に認められました』
ん?タナトス様?死そのものを神格化した神のことか?
本当に神は存在していたのだな。
俺は生きている時、神を信じていた訳では無い。せいぜい神頼みぐらいだ。
にしても勇気ある死として認められるってなんか俺すごくね?
ミカエルは話を続けた。
『そして今、あなたはタナトス様から転生のチャンスを与えられています。今の地球でもう一度新しい自分として転生するか 全く違う剣と魔法の異世界で転生するか選ぶことができます。』
転生か
厨二の心を刺激する言葉だな。
男はいくつになっても厨二病だからな。
地球に生まれ変わっても退屈かもな
それに比べて剣と魔法の世界とか
危なそうだが退屈はしなさそうだな。そして何より厨二の心を揺さぶる。
地球ではあと少しで妖精になれたが、まぁそんな心残りないしな
生まれ変わったとて心残りも果たせそうにないし、
『もし地球にもう一度生まれ変わったら記憶は残るのでしょうか?』
『いえ、残りません。ですが、異世界だと記憶を引き継ぐことが可能です。』
記憶が残らないのであれば異世界一択だな。
特に良かった思い出はないが、記憶が無くなるとなると、何か嫌だし、異世界で日本の記憶が何か役に立つかもしれないしな。
『異世界に転生したいです!出来れば何かチートとかは授けてもらえたりは…』
『すみません。チートなどの特別な力をを授けることは出来ません。』
そっか、まぁそうだよね。チート持った俺が異世界で暴れたりして世界崩壊させたりしたら神もたまったもんじゃないしな。
『ですが、異世界での人の平均の運動神経は地球の何倍も以上も高く、鍛えれば鍛えるほど強くはなれます。努力次第です。そして望むのであれば初期の能力を少し高めに設定することは可能です。』
『おぉーマジですか!』
『マジです。』
『少しと言わず大きく高めでも良いのでお願いします。』
『はい、分かりました』
俺は心の中でガッツポーズをした。
『ではその世界ゼノについての説明をします』
おぉーゼノって名前か
『ますこの世界には魔法というものが存在します。 ゼノでの魔法はイメージが大切です。そのイメージによって大きさは強さが制御できます。ゼノでは簡単魔法を使うために詠唱というものがあります。詠唱すると魔力を消費し詠唱に見合った魔法が発動します。そしてゼノはスキル制ではありません。ですが、形はだいたい決まっています。』
うむイメージが大切か イメージさえあれば詠唱は要らないということか
『そしてゼノの世界について説明します。ゼノには魔物という生き物がいます。その頂点に経つのが魔神です。そして魔神の直属の配下に魔王がおり、魔王軍というものがあります。魔王軍とは世界の北の端で戦っています。余り教えすぎると面白くないと思うのでこれ位にしておきます。冒険者として生きるもよし、お店を開くもよしです。自由に生きてください。』
魔王軍か
昔ラノベで読んだな
異世界転生物の定番だ
『ではゼノへ旅立ちますか?』
『ちょ、ちょっと待ってください。』
『なんでしょう?』
『その…ゼノの言葉は分かるのですか?』
『はい。転生した時に理解出来るようになっています。』
『分かりました。ではお願いします。』
とても楽しみだ。昔憧れていた異世界転生が本当にできるなんて…
『それでは良い人生を』
と、ミカエルは笑顔で言い
俺は光に包まれた。
俺は退屈な世界から生まれ変わるんだ
退屈をしない世界へと
こうして俺はゼノへの転生を果たした。
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