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〈聖シュクルメ学園〉。 海がよく見えるこの街で、いちばん海から離れた場所にあるこの学園は、この国で知らない人はいないほどの名門女子校です。この国の神様である〈おさとうのかみさま〉を信仰する全寮制の学園で「聖シュクルメ学園を卒業できたら一生幸せでいられる」という噂もあるくらい、この街の女の子なら必ず一度はここを志望するほど人気の学園です。 ただ、残念なことにほとんどの女の子は入学することが出来ません。それは、この学園には入学条件が2つあるからです。 ひとつ、身体的性別が女性であること。 ふたつ、髪の色が白であること(染髪による頭髪偽造行為は退学の対象となる)。 - - - - - - - - -▷◁.。 「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表して、お祝いの言葉を申し上げます」 しんとしたセカレードの真中。私は、壇上で新入生の皆さんへ歓迎の言葉を読み上げます。 「新しい一歩を踏み出す皆さんの心の中には、期待と不安の両方があると思います。私たち在校生も、入学したばかりのころはそうでした。しかし、友人や先輩方、そして〈シスター〉の皆様に助けていただきながら、少しずつ学園生活に慣れていきました」 舞台の上から、新入生の皆さんを眺めます。どの子もこれからの未来に希望を持った美しい表情。光と戯れる白髪たちがとてもきらめいて見えます。 「さて、この学園には、他とは違う点が いくつかあります」 ここからは〈シスターメア〉にお願いされていた、この学園の簡単な説明を読み上げます。 「ひとつは、勉強です。通常の授業に加え、〈おさとうのかみさま〉について学ぶ〈御伽〉という教科があります。はじめてのことで大変だと思いますが、この国の神様について教えていただける貴重な時間ですので、しっかりお勉強いたしましょう」 新入生たちの空気が一気に引き締まるのを感じます。聞き分けの良い子ばかりのようで、安心しました。 「次に〈姉妹制度〉です。私たち3年生と新入生の皆さんがひとりずつペアとなり、皆さんの学園生活をサポートする、というものです。学年を越えた交流は不安な方がほとんどだと思います。しかし、皆優しい先輩ばかりで、得られるものがたくさんあると思います。ぜひ積極的に話しかけてみてください」 話しながら優しく微笑むと、新入生たちの緊張が少し和らいだのを感じました。気を張ってばかりだと疲れてしまいますからね。 「最後に〈お祈り〉です。この学園では月に一度〈おさとうのかみさま〉に祈りを捧げます。お祈りの時間では、代表生徒がお言葉を唱え、全員で賛美歌を歌います。冬頃には、シュクルドールが出てくるくらいの大規模なお祈りもあります。はじめは戸惑うことばかりかと思いますが、ゆっくり慣れていきましょう。お祈りは、かみさまへお言葉を届けられる、とても素晴らしい時間ですよ」 全ての説明を終え、お話の締めに入ります。 「これから新しい生活の中で分からないことが出てきたら、私たち3年生はもちろん、2年生も頼って大丈夫です。気になることはなんでも聞いてくださいね。どうか皆さんの学園生活が、煌めき溢れる素敵なものになりますように」 在校生代表、生徒会長・シア。一言一句間違えることなく読み上げ、一歩下がって頭を下げる。割れんばかりの拍手が聞こえ、安心して小さくため息をついてしまいました。 舞台袖に行くと、ゼンとロウが待っていてくれました。ふたりと小声で少しお話をします。 「シア〜〜!素敵な挨拶だったよ!」 「ゼン、ありがとうございます。ふぅ……緊張しました」 「本当に?全然そんな風には見えなかったけどなあ」 「ロウは私のことをなんだと思っているのですか……第一印象は大切ですから。緊張もしますよ……」 話しながら舞台裏へと移動します。生徒会役員の私たちは、このあとの準備もしなければなりません。 「ふふ、そうだね。お疲れ様、生徒会長さん」 「おつかれさま!」 「ありがとうございます。さあ、次の準備をしましょうか」 「うん!このあとの〈アーデルシェリ〉のために、チョコレート出さなきゃね!」 そう、入学式のあとのいちばん大切な行事。 〈アーデルシェリ〉……妹探しが、はじまる。
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