冬の花は牡丹に散る

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 辰吉は始終を見ていた。声さえ掛ける事も出来ず生唾を飲み干す。 ――美しい美芳の唇を喰みたい。  桃色の唇にのったあの花粉さえ美味しそうにみえてしまう。そして何より、やはりあの白い手を汚したい――という欲望が湧き上がる。  一度覚えてしまった欲はまたの機会を伺っている。あの抑え切れない衝動がまた湧き上がる。 「どうしたらいい? やはり蔵元や杜氏に認めてもらわなければ。だがそれよりもまずは停止した取引先か……」  辰吉は考えを巡らせる。美芳のため、自分のため、蔵のため。自分に出来る事は何かあるはずと一晩中頭を動かす。  しかし、朝になって芳勝からとんでもないことを聞くことになってしまうなど、この時は露ほども思ってはいなかった。
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