触って、キスして、

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「な、なに!?」 あたしが声をかけると、 父さんが首を傾げる。 「いや、コーヒーの 豆をゴリゴリするやつ、 どこにしまってあるか 分からないんだ。 今日な、コーヒー豆を 買ったから明日の朝、 豆を挽こうと思ったんだが、 探しても探してもなくて、」 「っ、 コーヒーミルのこと!?」 「あ、そうそう、 それだ、」 「あたしが出すから!! 来て!」 あたしはドドドッと 階段を降りる。 父さんは訝しげな 表情を浮かべた。 「嵩良、どうした、 顔が赤いぞ。 熱でもあるのか、」 「っ、体操してたのっ、」 言うな言うな言うな 言うな言うな言うな 何も言うな気づくな 頼むから!!! あたしはズンズンと キッチンに突き進むと、 バババババッと 食器棚の下の収納棚から あれこれ取り出して、 奥の方にしまってある ミルを引っ張り出して、 ダン!!!とテーブルに 勢いよく置いた。 「これね!」 「あ、あぁ、 ありがとう、すまん、」 父さん、タジタジ。 さっさと戻ろう、 変なこと気づかれる前に、 変なこと言われる前に! いやもう、 やっばい。 ほんとやばい、 もし部屋の中に 入られてたら死んでた、 本当に死んでた、 無理無理無理無理、 危なかった・・・・・!! ドドドドドッと 階段を駆け上がって 自分の部屋に戻ると、 ベッドの上で 蓮くんが体育座り していた。 顔を膝に埋めて。 「・・・蓮くん?」 「・・・しっ、 心臓止まる かと思った・・・・!!」 蓮くんは顔を埋めたまま 絞り出すような声で言った。
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