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追憶する哀しい日々を鮮明に蘇らせたのは、ぼくたち三人が十五年ぶりに揃った同窓のちいさな集まりだった。もう二十代も後半になり、クラスで一番の人気者だった有希は結婚して子どももいたし、「プロ野球選手を目指す」と豪語していた俊佑はプロ野球選手の夢を叶えることなく、去年、所属していた社会人野球のチームを引退し、野球からは完全に足を洗っていた。
みんなあの頃の面影を残してはいたけれど、流れた月日の長さは嫌でも感じさせられる。
「ねぇ卒業する前に埋めたタイムカプセルのこと、覚えてる?」
そう言った有希が、すこし寂しそうな笑みを浮かべる。
当然その話が出るのは予想していたけれど、それでも有希の言葉にどきりとしてしまう。
「あぁ覚えてるよ。校庭の隅っこに三人で埋めたやつだろ」
それは大々的なものではなく、こじんまりとしたタイムカプセルだった。校庭の片隅の目立たないタイムカプセルは、ある人物のために用意したものだ。
「幸坂、か。懐かしい……」
俊佑が想いを馳せるように、その人物の名をつぶやいた。
幸坂郁は小学校を卒業する直前の二月の終わり――厳密に言うなら、二十四日の夕方に、少女のままこの世を去った。
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