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 そりゃ、慌てて何か食べ物ないかとうろつくよね。でもさっき部屋を片付けたから何もないってオレが一番良くわかってるよね。  残り二分になって、もう汁だけでもすすろうかと考えた時……オレ、閃いちゃった。追い詰められたら人間って脳がフル回転すんだね。  お隣の一人暮らしのおっさん、ケンジさんのとこに走ってパンでも何でもいいから恵んで貰おう。十万円の『海の宝石箱 味』は惜しいけど、空腹のまま死ぬのは嫌だよね。  って、残り一分じゃん!急ごう!!  玄関に向かい靴を引っかけてドアノブに手をかけた瞬間……。 《ピンポーン》  インターホンが鳴った。……もしかして。  涙が止まらない。  来てくれたんだね、父ちゃん!母ちゃん!姉ちゃん!  勢い良くドアを開くと、お隣のケンジさんが立っていた。……ケンジさんは泣きそうな顔で『海の宝石箱 味』を手に持っている。  そして、こう言った。 「パンでも何でもいいから恵んでくんない!?」  あー、ケンジさんも同じかぁ。  もう十何秒しか残ってないよね?パンすら恵んでやらない嫌な奴って思われたままで終わりたくないじゃん?でも説明してる時間もないじゃん? ちゃぶ台の上の『海の宝石箱 味』を持って、オレ、ケンジさんに向かって笑顔で見せたよ。  ケンジさん、一瞬で理解したよね。そして、ケンジさんも玄関先で笑顔になったよね。  次の瞬間、オレの視界は炎に包まれた。  ーーあ、天国ってこんな感じなんだ?  「あ、あのぉ……」  もう人見知りだとか恥ずかしがってる場合じゃないよね。目の前をパタパタと飛んでいる天使に訊くしかないよね。 「地球が滅亡してから何分経ちましたか?」  そしたら天使、答えてくれたよね。 「ちょうど二十分くらいですかね?」 「ありがとうございます」  オレ、急いで虹色に輝くベンチに腰かける。  辺りは壮大に広く、緑豊かで色とりどりの鳥とか飛んでたりしちゃって。みんな幸せそうに、読者とかバドミントンとか思い思いの事をしちゃったり?  何はともあれオレは『海の宝石箱 味』の蓋をはがして、割り箸を歯でくわえてパチンと割った。  食べ終わったら父ちゃんと母ちゃんと姉ちゃんを探そう。 「いっただきまーす!!」
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