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*  無事に任務を完了し、オフィスを出ると廊下は薄暗く、エレベーター前の自販機の明かりがなければ少し不気味なくらいだ。  松岡と並んで廊下を歩き、もうすぐでエレベーターという所で曲がり角から警備員が現れた。  松岡は、明らかにビクリとしていた。奈々子は「お疲れ様です」と言い、エレベーターのボタンを押す。  松岡を見ると、また眼鏡をくいっと上げていた。  エレベーターに乗り、一階に到着する。エントランスホールも薄暗い。  松岡は、いつもの様に背筋をピンとしてはおらず、やや猫背で鞄を抱きかかえる感じで足取りも心もとなかった。 …もしや、こやつ怖がりなのではないか、と奈々子は思った。  奈々子にいたずら心が芽生えた。立ち止まり、『松岡君…後ろにオバケが!』と言ってやろうと考えた。  少し早く歩き松岡より前に行き、立ち止まり振り返る。 「わっ!」 「きゃあっ!」  松岡は奈々子が止まったのに気づかなかったのか、正面からぶつかり、奈々子は倒れてしまったのだ。 背中の激痛を覚悟したが、松岡が奈々子を抱き締め、自分がクッションとなり倒れた。  奈々子は松岡に覆い被さる様にして、無事だった。  奈々子のバッグと松岡の鞄が、シューッと床を滑っていく。 「先輩っ!大丈夫ですか!?」  と心配して叫んだのは下敷きになっている松岡の方だった。 「…うん。松岡君こそ」 「いえ、僕は大丈夫です!」  奈々子は松岡の体からおり、松岡は上半身を起こした。
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