8人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
*
無事に任務を完了し、オフィスを出ると廊下は薄暗く、エレベーター前の自販機の明かりがなければ少し不気味なくらいだ。
松岡と並んで廊下を歩き、もうすぐでエレベーターという所で曲がり角から警備員が現れた。
松岡は、明らかにビクリとしていた。奈々子は「お疲れ様です」と言い、エレベーターのボタンを押す。
松岡を見ると、また眼鏡をくいっと上げていた。
エレベーターに乗り、一階に到着する。エントランスホールも薄暗い。
松岡は、いつもの様に背筋をピンとしてはおらず、やや猫背で鞄を抱きかかえる感じで足取りも心もとなかった。
…もしや、こやつ怖がりなのではないか、と奈々子は思った。
奈々子にいたずら心が芽生えた。立ち止まり、『松岡君…後ろにオバケが!』と言ってやろうと考えた。
少し早く歩き松岡より前に行き、立ち止まり振り返る。
「わっ!」
「きゃあっ!」
松岡は奈々子が止まったのに気づかなかったのか、正面からぶつかり、奈々子は倒れてしまったのだ。
背中の激痛を覚悟したが、松岡が奈々子を抱き締め、自分がクッションとなり倒れた。
奈々子は松岡に覆い被さる様にして、無事だった。
奈々子のバッグと松岡の鞄が、シューッと床を滑っていく。
「先輩っ!大丈夫ですか!?」
と心配して叫んだのは下敷きになっている松岡の方だった。
「…うん。松岡君こそ」
「いえ、僕は大丈夫です!」
奈々子は松岡の体からおり、松岡は上半身を起こした。
最初のコメントを投稿しよう!