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「いや…人の事は嫌いじゃないはずだ。嫌いだったら、こんな所でアイドルごっこやらないよ」
松門寺千秋、あいつの故郷だと言うから少しでも内面がわかると思ったのに
教えて貰うほど、想像以上にわけがわからない。
「じゃあ…お前ってさ、松門寺とはもうそういう関係なんだ」
「は?どういう関係だよ」
じゃあって何がじゃあだよ!
浦は小声で聞いた。
「松門寺とヤったのかって聞いてんだよ」
「はあ!?」
浦がやらかしたという顔でドアの方をちらりと見てから胸を撫で下ろした。
「…お前声がデカい」
「お前が!…お前こそ何言ってんだよなんで俺があのジジイと!わかってて聞いたよな!」
「だってそんなことでもないと、あの松門寺がこんな面倒ごとに手を出すとは。あの人に限って男に手を出すとは思わないけど…なんかお前があの人の弱み握ったかと」
「だからって俺の相手をジジイにするな!」
「なんだ。じゃああいつ血は飲んでないのか?」
「う、…うん」
「ますます意味がわかんねえよ」
「俺の方こそ。付きっきりで世話されたって俺の血が増えるわけでもないのに」
浦は一度腕組みをして黙り、テーブルにマグカップを二つ並べた。
ティーパックをぽんぽんと投げ入れ、沸かした湯を注ぎながら話した。
「ならお前、俺と手を組まないか。こっちはこっちで血を売るんだよ。儲けようぜ」
マグカップを手渡され、俺はそれを息で冷やした。
「それはもう、やらない。失敗した。それに、ここで稼いでも…」
「お前は何もしなくていい。俺が売人をやる。お前は血だけをくれればいい、そうして二人で山分けだ。金は俺が使えるように変えてやるから」
浦はマグカップを傾けて熱湯を口の中に流し入れた。
「…何で?」
「俺はお前を裏切った。
仕事だったから、な。お前と同じで金が必要だった。わかるだろ。
でも、全部終わって、お前が居なくなってわかった。お前が人間だからじゃない。
お前以上に俺を信じてくれた奴はいなかった」
俺も全然冷えない紅茶を一口飲んだ。
「見つけたぞ高砂颯喜!」
ドアの向こうから声がする。
「隠れるぞ」
「…どこに」
クローゼットだと言うが、これは教室の掃除ロッカー程度のチャチなものだ。
そこに良い体格の男二人が綺麗に収まるわけもない。
「は……はぁ…」
ドアの向こうから声がするが、隠れていても埒があかないと思う。
「お前の匂いキッツイんだよ…」
「…ごめん、バタバタしてて風呂入ってないんだ」
「そうじゃなくて…」
ドアの向こうからまた呼ばれる。
「いるのはわかってる!浦野!出てきなさい!
高砂颯喜君もそこにいるんだろう!」
クローゼットの中も蒸し暑いし、
お互いが呼吸をすると顔にかかるし。
「浦、もう無理だって。諦めよう」
「俺も無理だ、我慢できない」
「あ…?」
襟をぐいと引っ張られ、首筋に鼻がつく。
「一年人間の間で生活して慣れたと思った。
けど違う…、お前、匂い変わったし」
また同じ現象だ。
千秋と同じ発作かなんかか!
「お前もかっ!
今は…駄目だってば、このっ」
「暴れるなよ狭いんだから!」
「だったら出ろよ!」
「あいつらは玄関蹴破ってくんだよ!」
「何をこそこそとしているんですか!すぐに出てこなければ、浦野君は一週間罰則を与えますよ!」
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