私をみてください

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<プロローグ> 私の名前は、杏という。 私は相手を引っ掛けるイタズラが、成功した時の快感と注目されたいという心に、突き動かされた。 きっかけは、小学生の頃に遡る。 その頃の私の親は、私のことを、天才か何かだと勘違いしていた、 小学生で習う漢字を、すらすら覚えて、計算も得意で、習い事のそろばんで、一級をとったことがあるからだ。 小学生低学年から高学年に入るまでの間、私は天才だと信じて疑わなかったが、授業の内容もだんだんと複雑になってきて、理解することが難しくなっていった。 しだいに、私は天才だと言われるのが、嫌だった。 なぜなら、親の期待に応えないといけないからである。 「私は天才なんかじゃない。運が良かっただけだ」と、叫んでは、みたものの、周囲からは、ただの謙遜をしているだけで、馬鹿なものたちをあざ笑っているだけだと、思われた。 美咲ちゃんに、返された回答用紙の点数を覗かれて、「天才じゃないのに、物覚えも早くて、テストで、50点以上を確実にとってくるのは、私たちの当て付けだよね」と呟かれた。 そして、何よりも兄が、羨ましかったのだ。 兄は、頭の弱い人なので、母も口うるさく勉強しろと言うことをあきらめて、あなたの個性を存分に発揮しなさいという言葉しかかけなくなっていた。 そんなことを、頭の中で、ぐるぐると考えていくうちに、だんだんと兄が、うざったらしく思った。 私が、幼稚園に通っていた頃だったか忘れたけど、2歳上の兄と喧嘩したことがあった。 3時のおやつの時間に、バームクーヘンが一つしかなかったので、半分にわって食べることになった。 兄が半分にしてくれたのだが、半分にするのが下手なので、もう一方が大きくて、もう一方が小さくなっていた。 ジャンケンをして私は負けてしまい。兄が大きい方を取ろうとしたので、私は大声で泣け叫んで、それを阻止することにした。 作戦は大成功し、気の弱い兄は、かたまってしまった。 何もずるくないのだが、憶えたての「ずるい」という言葉を連呼して、もう一回ジャンケンをやってもらおうと試みてみたのだが、母が割り切ってきて、勝負に勝ったんだからと言い兄が大きい方を食べてしまった。 兄に、大きい方を取られてしまったという悔しさが、あった。 あれから、何事もなかったのだが、だんだんと私が目立つことによって、兄がしかけてくるようになった。 兄は、わたしの飲み物に小細工をしたり、影で暴力を振ってきたりしてきた。 私が兄の悪事を、声に出して訴えても、母は私が悪いと決めつけるようになった。 母が、兄ひいきをしていると思うようになった私は、「お兄ちゃんばっかり」と母に言い放った。 誰も信用してくれたいと思った私は、自分の意思を強く持つことに、執着したのだった。 <里帆ちゃんとの出会い> 幼稚園の頃の私は、里帆ちゃんという子に出会った。 最初は、仲良くしていたのだが、しだいにぎくしゃくし出すようになり、仲が悪くなった。 仲良くしていた頃は、里帆ちゃんの家に泊まりに行くこともあった。 あの時はやっていたドラマについていけなかった里帆ちゃんは、少し周りからはぶられていると感じていて、おもちゃかお菓子の取り合いになったときに喧嘩をしたことが、原因でヒートアップしたのだろうと思う。 あのドラマは、大人系のドラマが好きな母が、つけたラストフレンズというドラマだった。 そら、里帆ちゃんがついていけないのもわかるのだが、私は里帆ちゃん以外の子にもドラマをすすめたりしていた。 私の母は、かかあ気質が強く、そのうえ、好きなドラマがあると、子供たちがアニメに夢中だったとしても、自分が好きなドラマを優先するような人だった。 それがきっかけで、ドラマを見るようになって、ドラマの話をしたりしていた。 この時、ドラマの話をする友達もできたのだが、数が少なくそのうえ、言葉を変に憶えてしまう。 今は、ドラマよりも青年アニメに夢中なのだが、この頃はドラマにハマっていた。 この歳で、ドラマに夢中になっているのは、ほんの少数だったので、話がわかる人などいなかった。 よく知らないダンボール戦機というアニメに夢中の男子から因縁を、つけられることも多々あった。 人知れず私は、孤独だったのである。 家でも、誰も信用してくれる人なんて、いなかった。 だからこそ、何かにつけて注目してもらうことが重要だったのである。 〈注目と外れた道〉 私が中学校に入った時だった。人知れず孤独を感じていた私は、私と同じで孤独を感じている渚という名前の不良少女とであった。 渚は、私の心の拠り所になった。 先生たちを小馬鹿にして、からかって遊んだ。 髪の毛を明るくして、目立つようにしてやったりもした。 先生は、最初私たちを無視することをせずに、いろいろと校則に引っかかっているからと、注意しにきた。 私はただただ嬉しかった。 でも、そんな私を心配に思ってくれるクラスメイトもいた。 その子は、私を渚から、遠ざけようとしてくる厄介者に感じた。 私は臆病な犬のように、唸り散らして威嚇した。 渚は私の親友だと思っていたのだが、渚に彼氏ができてしまって、私だけのものではなくなってしまった。 それが許せなかった。ただ渚を返して欲しくて、私は、渚の彼氏を殺した。 殺そうと思ってやったのではないただ胸ぐらを掴んで、上下に頭を揺らしていたら、机の角にぶつけただけだった。 後頭部に致命傷を負い意識不明になっている彼の服を脱がして、裸にした。 これが渚が愛した体だと思うと、私も一回でもいいから抱いてもらいたかったと思って馬乗りになり、彼の体の体温が冷たくなるまで乗っかっていた。
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