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「うっわ。まじかぁ、」
ベットの上、朦朧とした意識の中彼の小さい声が聞こえる。部屋の外で誰かと話しているようだ。
「全然気がつかないんだも〜ん、こっちだって気まずかったよぉ〜」
「・・最悪の目覚めだな。」
ジンジンと痛む腰を撫でながら周りに落ちている服を手繰り寄せた。
扉の外から聞こえてくる甘ったるいネバネバとした喋り方、彼の姉だ。
彼の両親が仕事人間の為、ほとんどこの家には帰ってこない。実質彼の家にはなっているが、姉とその友達が押しかけては遊んでいる。
ちなみに俺はそいつらがだいっっ嫌いだ。
なんでって?
うるせぇし下品だし、ビッチにヤリチン。
おまけにその中には彼と、おせっくすをしたメスもいる。
まだ付き合ってない時に『朝目覚めたら俺のが彼女の中に入ってたんだよ。上にのって喘いでんの、ウケるくね?』と話をされたことがある。
いや、全くウケねぇし。
しかもそのまま最後までヤッたと言うんだから俺はもう言葉を失った。
こいつ頭大丈夫か、と思ったが大丈夫じゃないので仕方ない。とにかくそんな犯罪じみたことをやるくそビッチが彼の家にまだ遊びに来ているのが問題だ。
どうせ今日も来てんだろ。だいたい遊びにくるメンツは知っている。何回も鉢合わせしたことあるし。
階段下から足音が上がってきて、最も聞きたくなかった女の声が聞こえてきた。
「あ、終わったァー?きゃー服来てなぁ〜い、えっちー♡」
あはは〜と3人の笑い声が聞こえる。
よっしゃ、帰ろ。
俺はこのままだとあのメス豚をボコボコにしてしまうだろう。急いでパンツとズボンをはいた。
俺は平和主義者なんだ。
俺が女に手を上げて彼がそれを庇う様子が目に見える。そんなことされたら俺はあいつを殺す。
警察沙汰になる前にここから去ろう。シャツが見当たらないが、探してる間にドス黒いものに支配されそうになりこのまま外に出ることを決意した。
ここで波に入られても困る。アイツらにからかわれて終わるだけだし。
半裸のままうるせぇ奴らに聞こえるように乱暴にドアを開けた。1階に続く階段前でキャッキャウフフと盛り上がっている。俺に気づいたメスが楽しそうに笑って指を指してきた。
指すんじゃねぇーよ、お前義務教育って知ってる?あ、猿だから知らねぇーのか。
「あ〜、こっちも服きてなぁーい。ウケる〜。」
ウケんのはテメェの頭だよ。
人様の彼氏に何押し付けてんだ?その胸部の脂肪2つとも剥ぎ取るぞ。
「どぉ〜も、すみませぇ〜ん。気持ちよすぎて来てたの全然きづきませんでしたぁ〜。」
アホ女のマネをして彼らの真ん中をドスドスと歩く。階段前に溜まってんなよ邪魔。
不機嫌マックスで彼に巻きついている腕を睨みつける。
繋がせてんなよアホか。
そいつさっきまで俺に夢中で腰ふってたけど?中古でいいなら、どうぞどうぞ、
降りようとする俺の手首を彼が掴む。
「服は?」
いつも通り、冷たい声とさっぱりとした顔。さっきまでの熱は嘘みたいもう吐き出したから俺はいらない?もしかしてセフレより冷たい態度取られてるんじゃねーの俺、今。
傷ついた心が防衛反応を起こす
「あ?無かったんだよ。」
イライラが募って八つ当たり。傷つくよりは100倍まし。掴まれてる手首を思いっきり振り払うが彼は手を離さない。
「なに。」声に苛立ちがのる。
「まってて、着るもの持ってくるから。」
そう言って部屋に向かっていく。
はぁーーーん???
指図してんじゃねぇーーよ。
だァーーれがテメェの言うことなんか聞くかボケ。
あー、ダメだ沸騰しそう。
どうすればいい?教えてマイメロディ〜〜
イライラを誤魔化そうと頭の中でふざけながら階段をドスドスと降りる。
「あ、おつかれ〜楽しそうだったねー笑」
なんだこの下品な奴らは。階下のお洒落なカウンターには汚ぇ奴らが3人酒を飲んでいた。
挨拶する気にもなれなくてそのまま無視して通り過ぎる。
「え、怒っちゃった?怖いー」
殺すぞ〜?
「そんな可愛い格好で外出たら危ないって笑」
1階が下品な笑い声で包まれる。
だる。てかくっさ、飲みすぎだろ。
俺の反応が面白かったのかやけに突っかかってくる。
「さっきまでかわいい声してたじゃん。」
「もっかい聞かせてー笑 サービスサービスー」
きっっつ。あー、キツい。
このイライラにこれはキツすぎる。
カウンターにおいてあったワインを力任せにそいつらに投げ、半笑いで叫びつける。
「いやぁ~!粗チンじゃぁ〜ねぇ!!笑」
気に触ったのか男が半ギレで手首を掴んでくる。
「試してみる?」
「ごめんって、俺嘘つけないもん。」
威勢の良さだけなら負けないよ?明らかにお前粗チンだろ。
「俺のハニーにちょっかい出さないで下さいよ〜」
彼がへらへらと笑って階段から降りてくる。
なんっだその緩みきった顔は。
ずいぶん遅かったけど香水女とちょめちょめでもしてたんか?
睨みつける俺を無視して服を押し付けてくる。
「お前のハニー怖いよ、みてこれ。」
ワインの散らばった残骸が白い絨毯に綺麗に後を残していた。
彼が俺をじっと見つめる。
え、何その目、俺が悪いの?
俺やっすい風俗嬢みたいなこと言われてたんだけど?
白色の絨毯に赤色がどんどん滲んで、同時に罪悪感が押し上げてくる。
さっきまで沸騰していた頭が冷えてきてテンションまで下がってきた。
なんで俺を庇わないの、あーうっざ。謝ればいいんだろ。
「…ごめん。」
普通に喋ったつもりが絞り出したような声が響いた。思ったよりも気が参ってるようだ。声が震えていたような気がして俯く。
何が面白かったのか3人に笑いが広がる。
「彼氏の前だとしおらしいじゃん笑」
「機嫌なおった?じゃあサービスしてぇ!」
「あん。」
一言喘いでやると3人はまた馬鹿みたいに笑いだす。気持ち悪、かえろ。
彼から貰った服を着て、視線を送る。
「じゃ。」
正直さっきので体力はないし腰も痛いし、とにかく疲れたからこのままここに居座りたかったが、猿共と一緒にいるのはさすがに精神に異常をきたす。
「おくってく。」
彼はそれだけ言うと玄関まで俺を連れていった。
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