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結局次の昼飯の場所は見つからなかった。
無難に教室でもいいけど、彼が嫌だと言うんだからしょうがない。テスト週間中は部活がないので学校が終わるのが早く、教室じゃ集中できないからと俺の家に移ることにした。
「いや、ここ違くね」
彼は平均点を取りにいきそうな顔をしているが、普通にバカだ。俺の方がまだ点数がたかい。
俺はギリギリ赤点を免れるタイプで、彼はギリギリアウトなタイプ。
「よし、諦めよう」
アホ2人が揃って勉強をするもんだからそりゃあ形になるはずも無い。
「せんぱ〜い、教えて下さーい」
家に遊びに来たFラン大学生達に向かって階下に叫ぶ。一応大学受験してるし入学してから半年も経っていない。これで出来なかったら裏入学確定だ。
実際姉が行った私立の大学は裏入学の噂が絶えず、金持ちが集まりやすい。そいつらがゆるっゆるの頭で遊びまくり何か起こると金で解決してしまう。
結果、調子にのったイキリ大学生が完成するわけだ。
「やっべ、勉強してないから分かんないわ笑」
ドスドスと上がってきたパーマ男は問題を見もしないで笑い出す。
「はい、裏入学確定。」
姉貴の友達なんてろくな奴いないんだから期待した俺が悪い、隣の彼はもはや勉強を諦めたのかスマホゲームを始める始末だ。
そんなことより楽しいことしようよ、とアルコールの匂いを漂わせながら男が肩に巻きついてくる。
今そうゆう気分じゃないんだよな。
だるくてリビングまで水を取りに行くと、頭のおかしい女が酒を振り回して叫んでいた。
地獄絵図みたいな光景に頭が痛くなる。
「うんうん。辛いね、酷いやつだね。」
家を破壊されるのを止めたい俺は適当に女をハグして頭を撫でる。くっそあの野郎メンヘラを持ってくるんじゃないよ、この手の女に甘くするのは危険だがしょうがない。ここで事件を起こされても困るのは俺だ。
「わたしが!!わたしがさきにいい゛!!!」
完全に飛んでるようで、腕の中では意味のわからない単語を叫んでいる。
あーもう、せめて日本語を話してくれ。
気が滅入りそうになって学校に残らなかったことを後悔した。
「え、何。パキったの?笑」
姉貴の声が玄関から聞こえてくる。
よっし、友達はお前に任せた!!
俺は帰ってきた姉貴に女を渡すと急いで彼のもとへ逃げる。
が、こっちでも地獄絵図が広がっていた。
「もー、何してんの」
溜息をなんとか飲み込んで話しかける。
パーマ野郎が覆いかぶさって彼の表情が見えない。
扉を閉めて2人の方にいくと、何事も起きてないように押し倒されたままゲームを続けている。
チラッとこちらを見るとまた再開しだした。
見境が無さすぎて呆れてくる。男のフードを思いっきり後ろに引っ張って彼から汚物をどける。
「追い出しますよ」
「え、そうゆう関係じゃないの?3Pしない?」
あったま痛い。
参考書の角で思いっきりどついてやろうか。ヘラヘラしてる男にイライラが募る。これまでセフレを家に連れてきたことはあったし、3Pだってしたことあったけど、あったけどさ。
違うじゃん、見れば分かるじゃん。
「こないだ男ともやったろ、ツレてきたんじゃねぇの?」
無理やり参加させたのお前だろうが。
返事するのもバカらしくてそのまま追い出すことにする。引っ張る俺を無視してアホは強引に彼の耳に顔を寄せ、甘い声で囁きながら慣れた手つきでボタンを外した。
「俺うまいよ?どう?」
は、ここで始めるわけ?
てかこいつはなんで抵抗しないの?
2人に対してフツフツと怒りが込み上げる。
「ほんとに見境いなく勃つんですね。羨ましいわぁ〜。」
嫌味っぽく吐き捨てて無理やりつまみ出す。
ドア外からはつまんねぇーと聞こえてくる。
「いやシラケることしてんの自分なんで。」
自覚持ってもろて。
落ち着いて勉強しようと彼の隣に座ると、チャームポイントの死んだ目が俺を見つめてくる。
あー、この感じ。
さっきまで汚い奴らを見すぎたせいか無表情さえ愛おしい。ついニヤけてしまい声が甘くなる。
「ん?」
問いかけても何も反応せずに、じっと見てくる。
俺が首を傾けると彼はゆっくりと口を開いて、閉じた。
「男、したことあるんだ」
もう一度開いて平坦な声で喋る。
え、そこ興味持っちゃうか。
「まぁ、あるっちゃある、かも。」
なんとなく気まずくて声が上がる。
女とのトラブルはよく話してたけど、男とやった事は話していない。隠してた訳じゃないし疚しいことがあるわけじゃないけど、
「ふーん。見境いないって、」
「え?」
声が小さく掠れていってよく聞こえない。
もう一度聞き返しても彼は何も言わずに再びゲームに戻っていった。
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