変化

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変化

おはよう世界、そして死んでくれ。 今日は彼と別れてから1ヶ月記念日だ。 うつ伏せになったまま声にならない叫びを枕にぶつける。俺は憂鬱な気分に打ちのめされベットから出られずにいた。幸せは俺と無関係の所でぐるぐる回っている。そうゆうものだ。 この無気力感と絶望感から逃れたくて口に酒をつぎ込む。ぜんぶ招いたのはおれだけど。 心臓がぎゅうぎゅうと締め付けられて吐き気までしてくるが、いつものような得体のしれない不安感はない。 それに安堵さえしている。 怖かった、俺は彼が怖かったのだ。 1度手に入れたものが無くなるなんて耐えられない。甘い蜜のよう、1度その味を知れば虜になって抜け出せれなくなる。だから彼からの言葉を素直に受け取ることが出来なかった。彼の言動に棘を作り出して心の底では安心していたのかもしれない。 彼は俺が暴れた後必ず、優しく傍にいてくれた。 怒ることも、責めることもせずに見捨てないでいてくれた。本当はもっと違っているのかも、俺のことを大切に思ってくれてるのかも、そう思うことはあった。臆病者の俺は、彼の気持ちを受け止めたらそのまま消えてしまいそうで、勝手に悪い方向に捉えてしまっていた。 結局彼のことを好きだといいながら、自分を守ってしかいなかった。 傷つかないように、惨めにならないように、必死に彼を悪者にしていた。 そんな状態を放っておいてマトモな恋愛ができるわけが無い。 不安に耐えられなくなった俺は 居なくならないで欲しい。俺を捨てないで、もっと好きになって、依存して、ボロボロになって。 そんなドス黒い感情に支配されてしまったのだ。 ちなみに俺は1ヶ月の登校拒否を貫いている。 だって、やる気起きねぇーし。1ヶ月じゃ留年しないって、もう体験済み。 あの日、疲れきった体に背中から彼の体温が伝わってきて、どうしても離したくないと思った。 大切な人を傷つけようとした自分、この熱を手放してしまったら俺はきっと生きていけない。 恋愛っていう形じゃなくていい。 1番じゃなくていい、せめて友達として、笑いあっていたい。 変わるしかない。 変えるしかない、そう思ったのだ。 学校がダルいのは本当のこと、 でもそれ以上に自分を変える時間が欲しかった。 最初は自分から別れを持ち出した癖にあっさり頷いた彼に落胆したが、距離を置いたのは正解だった。 彼と付き合ったままだったらこんなにもスムーズに心の入れ替えに進まなかっただろう。 あれから1ヶ月、連絡さえとっているが会ってはいない。1目見たらまた甘えてしまうからだ。 1ヶ月の間に俺への興味無くなっちゃった? 好きな人ができたかも、恋人だっているかもしれない。そんな感情に振り回されて、思わず会いに行きそうになったことだってある。 その度に己を奮い立たせては何とか堪えた。 彼は爆発する俺に根気よく付き合ってくれたのだ。俺だって、俺に向き合わなければいけない。 そう思えるほどに心は強くなっていた。 あいつに彼女が出来てても、もう、大丈夫。 もう、こんな恋愛やめてしまえ。 俺はようやく、《恋愛》という病気から立ち直ろうとしていた。
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