きっかけ

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「うま。」 初めてここで会ってから1ヶ月ちょい。彼は毎日俺を部室へと連れていき鍵を開ける。買いすぎたといって購買の品を渡してくることもあり、俺はそれを1人で食べる。 決して残飯処理ではない。 昼が終わりそうになるといつのまにかあいつらの所から戻ってきて、昼寝をしてる俺を起こし、そうして鍵を閉めて俺を教室に連れて帰る。 「・・・俺飼育されてね??」 彼から貰ったにんじんスティックを食べながら、餌やりされていた小学校のうさぎを思い出した。 同時に1年の時のヒモの噂を思い出す。 彼は年上のお姉様に飼われているらしい、飼われるって何すんだろ。 眠さで落ちてくる瞼を閉じ、人参スティックを横において寝転がる。 最近パパ活を始めたといって金使いが荒くなった幼地味の女が浮かんできた。くりっくりの目にばさばさのマツエク、天ぷらを食べた後のようなグロスまみれの口、汚いとしか思えないそれを、金持ちは買っている。 彼を飼ってる女は惚れてんのか、それかペットみたいな感じで? 彼を連れていい気分になって、アクセサリーにはピッタリな彼の容姿。 体の関係はありそうだよな、部活中に1度だけ彼が脱いだ所を見たことがある。筋肉質な体、褐色の肌に割れた腹筋がよく映えていた。 あいつとするって、どんな感じ? うまそう。いや、どうかな。 適当に終わらせてそうな感じもする。 だるそうに笑いながら、なんとなく腰ふって、 うん、こっちの方がしっくり。 両手で押さえ付ける派?それとも片手で、ゆっくり?激しく? 「・・・変態かよ」 女を抱いてる彼を想像してぞくぞくした。 何を隠そう俺、ゲイだし。 頭の中にゲイという言葉がぐらんぐらんと揺れる。 だから関わりたくなかったんだよ、 「まぁ好きにならねぇーけど。」 ボソッと呟いて惨めになる。 そこまで俺は身の程知らずじゃないし、お先真っ暗な茨の道を進むほど、バカでもない。 こんなこと考えるのは失礼だということは十分承知の上だが、想像した行為中の彼に体が興奮してくる。 だって、皆から注目されてる彼が、特別な彼が行為の時には自分に夢中で、 「・・どんな優越感だよ。」 考えただけで頭の中に気持ちいい刺激が伝って震えた。俺は多分彼に憧れを抱いてる。 苦手だと思ってたあの雰囲気にも笑い方にも今ではもうすっかりハマってしまって。そんな彼が俺に、俺だけに夢中になったら、 体がジワジワと熱を持ち始める。 必死になったりすんの、お前が、? 熱くなって、激しく求めたりする? 指先と足先に変に力が入る。 ちょっと力を入れると脳が感じていた快感が溢れて全身に伝わった。 想像の中の優越感がさらに俺をまくし立てる。 あー、この気持ちよさ最高。 罪悪感なんて吹っ飛ばして、俺の身体は完全に熱くなってしまった。簡単にその気になってしまった己に舌打ちをする。 別にどうこうなりたい訳じゃない。 おかずくらいには使わせてくれよ、 自分で言って気持ち悪くて彼に同情する 「あー、死にてぇ。」 昼休みが終わるまで10分、あいつが来るまで5分。 彼が来るまでに抑えるか、どこかで処理をするか。自分を信じて精神統一するのも手だが間に合わずにからかわれるのはごめんだ。 俺は体育館裏のトイレで熱を吐き出すことにした。部活前だ、どうせ誰もこっち側にはこない。 鍵を閉めに来てくれるのに俺が居ないのは失礼だろうとルーズリーフにメッセージを書き残す。 『鍵閉めありがとう、ごめん。先に戻ってる。』 部室から出ようとすると完全締めきれていなかったのか扉が少し空いていた。隙間に手を入れ錆びた重い固まりを横に引っ張りトイレへと急ぐ。昨日雨が降ったせいか外のトイレはジメジメとしていて気持ち悪い。 奥の個室へ入り鍵をしめる。 さすがにこの状況で彼を使うほど俺は変態ではない。自身に手をかけるとAVを脳内で再生させる。 「……ッ……ふ」 快楽の波がすぐに大きくなって、思ったより早く終わらせれそうだ。 息が漏れないように唇を強く結び己をたかめる。 デカいの、きそう。 ぬめった先端を親指で攻め立てる。全身に力がはいって、 「ン…………ッツ。、、………………ッは、…………ぁ…………あ?」 肩が小刻みに上がって、自分の浅い呼吸が聞こえてくる。急がないと、乱暴に手についた白濁のものをティッシュで拭き、まだ乱れたままの呼吸とズボンを荒く治しながらドアノブに手をかけ扉を開いた。 そこで俺の思考は停止した。 細く、三日月になった両目と視線が合わさる。 「なーにしてんの、えっち。」
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