※R18

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※R18

オレンジ色の街の中を2人歩く。 つい最近まで部活があった俺らにとってまだ日が出ている時間に帰るのは違和感しかない。 カバンの持ち手が重さで肩にくい込み、じめじめとした暑さも加わって歯切れの悪いイライラが増す。 「あちー、」 重たいカバンを投げそうになるのを冷たいアイスを食べて我慢した。 隣の彼も同じのようで、眉をしかめながら暑いとボヤいている。光が首筋の汗に当たって彼の色気を倍増させる。 かっこいいよな、やっぱり。 俺が惚れてるから贔屓目にみてるとか、そういうのじゃない。 彼が俺を隣に置くようになってから、初めて見た時の衝撃だとか、抱いた感情とか、そんなのは感じなくなったが、ふとした時に別世界の人間のように感じる。 どっかのマンガから出てきたようなヒロインの相手役じゃないほう。 当て馬みたいな、女を弄んで主人公に撃退される役。お前が女に一途とか俺がムカつくし、そんくらいの役にしとけ。 ファストフード店の窓に自分の顔が映る。 俺はたぶん取り巻き、彼が『俺は女も男もどっちも虜にしちゃうんだぜ』感をだすためのモブ男1。 そんな感じ。 センター分けの前髪は彼と同じで、割と長くて目にかかって鬱陶しいから横に分けてる。 目は他の人と比べると少し横に長い。 よく死んだ目をしていると言われるが、眼球自体が奥に入ってるせいか、光が当たらないのだ。 鼻は高くもなく低くもなく、大きくもなければ小さくもない。口は薄い。 幸の薄そうな顔とはこうゆうこと、 世の中には『惚れたら負け』という言葉がある。 俺は今こいつに惚れてるから負けている。 負けているから、苦しくて泣きそうになるのだ。 俺が傷つかない為にはどうすればいい? 俺にこいつを惚れさせればいい。 恋人なのに惚れさせなきゃいけないってどうなのとは思うが、元々『合うと思う』という訳の分からない理由で付き合い始めたからしょうがない。 「なーに考えてんのよ。」 「うるせぇ、今お前に構ってる暇はない。」 彼は無表情の俺から感情を読み取るのが得意だ。 表情筋が死んだ俺を観察することは中々至難の技だろうが、敵を褒め称える趣味は俺にはない。 真剣に考えているというのに、彼は邪魔するようにアイスが無くなったただの棒を押し付けてくる。 「おい、汚いだろうが。」 「ひっでー、お前の彼氏様だよ俺?」 でたよ、都合のいい時だけ彼氏を名乗りやがって。 俺が睨みつけているのが分かったのか彼は両手を上げ降参のポーズをとる。 「誤解だよハニー。香水のことだろ? 仲直りせックスでもする?」 呆れて言葉もでない。 そうゆうのって、仲直りするためにすんの?俺のご機嫌をとるため? めんどくせぇからとりあえずヤって黙らせとこう的な、俺が嫌いなのはそうゆう所。 だって考え方に『俺が好き』っていう気持ちがない。 「お前とはしない。二度とな。」 吐き捨てるように言うと、俺は持ってた食べかけのアイスを彼に投げつける。無理矢理して欲しいわけじゃない、そうじゃないって何で分かんねぇの? 彼は器用にかわし、俺の顔に迫ってきた。ほぼゼロ距離。かかる息がくすぐったい。 「ごめん。俺とはしないって、他の奴とすんの?」 彼の瞳の奥がドロドロに溶けている。 「許して?」 普段見せない真剣な顔と声に体が興奮してしまう。 しない。って宣言したすぐ後に、そんな目にじっと見つめられてゾクゾクしてしまうんだから俺は救いようがない。
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