【ショート・ショート】ゆーとぴあ

2/4
前へ
/4ページ
次へ
「まぁた、歴史にまつわる本ですか? 哲夫さん、本当に歴史好きですね」 「しょうがないだろ。 正しい歴史を知ってないと、ネット上で反論出来ないんだからよ。 そういうお前も、アニメか何かのムックを読んでるじゃねえかよ」 「この間、Twitterで『にわか』って言われたから、ちょっと勉強しようと思って」 「アレ、哲夫さんとヒロシさんじゃないですか?」 俺とヒロシが話し合っていたその時、今度は会社の同僚の葉月が搭乗し、俺達二人の座席の隣に座った。 「お前も当選したのか。 しかし、このプロジェクト。 一体どういう基準で、当選してるんだろうな」 「菅田首相からのご褒美じゃない? 私達、頑張って仕事してるっていうのに全く報われてないし、多分それをマイナンバーカードで知った国が当選させてくれたんだよ」 言い終えた葉月は、スマートフォンを取り出すと、映し出された画像に対して舌打ちをする。 「また葉月さん、キラキラ女子のインスタを見てキレてる……。おーこわ」 小声で俺に耳打ちしたヒロシが肩をすくめると、飛行機が離陸の旨を告げた。 俺を含む全ての乗客がシートベルトをすると、離陸した飛行機は太平洋にある「クリーンアイランド」に向けて大空を切り分けて進んでいった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加