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青年はまず最初にスマートフォンのカメラでお墓の写真を撮影した。荒れ墓の写真は見るも哀れで虚しさすらも感じるものである。
青年はお墓の周りの雑草を刈ることにした。お墓の背より高い名前も知らない草の伐採である。青年は持ち込んだ草刈り鎌で雑草を刈っていく。
ザク ザク ザク……
束ねられ分厚く硬い雑草の束が刈られていく。刈られた雑草は70リッターのゴミ袋にギッシリとつまるぐらいの量があるせいか重量感がある。青年はこれを持って帰ると思うだけでウンザリとしてくるのであった。
落ち葉と雑草の掃除が終わり、お墓の周りはかなり綺麗になった。次はお墓の水洗いである。
さて、水道はあるだろうか? 青年は辺りを見回した。すると、長年放置されていると言った感じの見窄らしく青錆のこびりついた蛇口があることに気がついた。青年は冷たく硬い蛇口をゆっくりと捻った。
きゅい きゅい きゅい……
「駄目だ、水が出ない」
水道は死んでいた。どれだけ蛇口を捻っても水が出てこないのである。しかし、青年にとってこれは想定の範囲内。こんなこともあろうかと水を満タンに詰めたポリタンクを携行していたのである。水をバケツに入れ、その水をスポンジに染み込ませた。
青年はスポンジでお墓を拭いていく。明らかに露骨にこびりついたコケや泥を中心に軽く濡らし水分を与えていく。粗方、水洗いが終わったところで次は墓石洗浄用洗剤を染み込ませた雑巾で墓石全体を磨き綺麗にする。刻まれた碑文の汚れは小型ブラシでゴシゴシと削る勢いで洗浄する。
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