ばいばい、さんたまりあ

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 基本的にシーズンオフの穂高は実家暮らし、ということになっている。  まあ、確かに自宅で過ごしてはいるのだが、最早、元の持ち主の祖父母も他界し、相変わらず定住しない両親やまだ学生の弟たちが居る訳でもない。ただ、間貸ししているK大のセンセイと、冬の間は同居することになるだけである。  …そういうことになっている。  この生活も10年ほどになって、もう誰も、何も言わなくなった。  ありがたい話である。  シーズン中は全てが明々白々、それこそ超特急のような毎日で、打って変わったこの静謐で隠微な生活が穂高には…そして彼にも、どうしようもなく必要だった。
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