ばいばい、さんたまりあ

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「ほたか! 風呂どうする?」  はっと視界が戻って来る。  すぐ入るか、という彼の問いに、穂高はああとかうんとか応えた。気を取り直し、そっと写真を別ページに挟む。そして写真が挟まっていたページを改めて開くと、 「おつ… オツベルと象…?」  象、は動物のゾウだろうが、オツベル、というのは聞き覚えがないが、どうやら登場人物の名前のようだ。童話らしく短い一編だったから、穂高でもあっと言う間に読み終わる。  それは余りに、  あまりにあっさりとしているから、どうしていいか解らなかった。  鶯みたいないい声で  のんのんのんのんのんのんと  ずうっとこっちに居たらどうだい。  居てもいいよ。  ブリキでこさえた大きな時計 と鎖  赤い張子の大きな靴 と分銅  赤い竜の眼をして  さよなら サンタマリア  からっきし意気地のないやつだなあ  仲間に手紙を書いたらいいや  月はわらって斯う云った  白象はさびしくわらってそう云った。 「どうして」
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