29人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほたか! 風呂どうする?」
はっと視界が戻って来る。
すぐ入るか、という彼の問いに、穂高はああとかうんとか応えた。気を取り直し、そっと写真を別ページに挟む。そして写真が挟まっていたページを改めて開くと、
「おつ… オツベルと象…?」
象、は動物のゾウだろうが、オツベル、というのは聞き覚えがないが、どうやら登場人物の名前のようだ。童話らしく短い一編だったから、穂高でもあっと言う間に読み終わる。
それは余りに、
あまりにあっさりとしているから、どうしていいか解らなかった。
鶯みたいないい声で
のんのんのんのんのんのんと
ずうっとこっちに居たらどうだい。
居てもいいよ。
ブリキでこさえた大きな時計 と鎖
赤い張子の大きな靴 と分銅
赤い竜の眼をして
さよなら サンタマリア
からっきし意気地のないやつだなあ
仲間に手紙を書いたらいいや
月はわらって斯う云った
白象はさびしくわらってそう云った。
「どうして」
最初のコメントを投稿しよう!