序章 墜ちる星

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「くっ!?」  巨大な炎の渦の中から黒く細い刃が真っすぐに伸びてきた。  女は間一髪で横へ跳び回避。  態勢を崩して地面を転がった後、膝立ちの状態で慌てて燃え盛る炎の海を見やると、その中から悠々綽々(ゆうゆうしゃくしゃく)といった様子で、三日月のような歪んだ笑みを浮かべた男が出て来た。  指先から痣と同じ色の刃が伸びているが、それ以外の痣は元に戻っており、服は焼けているものの体には傷一つつけられていない。 「大した呪力だ。たかが陰陽五行でも、ここまでの威力とは恐れ入った。さすがに並の陰陽師とは……いや、高位の陰陽技官ともケタが違うな」  男は楽しそうに言い、指先の刃を体へと引っ込め、痣として腕に纏う。  女は悔しそうに眉を歪めると、すぐに立ち上がり踵を返して走り出した。  逃走劇が再開される。  既に日は暮れ、暗い森はより暗くなり、おまけに雨まで降り始めていた。  それでも逃げ切るために足を止めない。
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