序章 墜ちる星

4/9
前へ
/293ページ
次へ
「クソがっ! いい加減、飽き飽きしてんだよ!」  苛ただしげに叫んだ男は、指を目の前の背中へ向け、痣を収束させて黒い刃を作り伸ばす。  しかし彼女は冷静に、呪符を背後へばら撒くと「界」と唱えることで瞬時的に障壁を作った。それにより刃の接近を遅らせると、横目で軌道を確認して紙一重で回避。  それを繰り返しながら二人は走り続けるが、呪符とて枚数は限られている。  女はなりふり構っていられないというように、乱暴に呪符の束を取り出すと、足元へ投げつけた。 「隆起せよ、大いなる大地の化身、急急如律令」  男がすぐに追いつき、ばら撒かれた呪符をまたいだ次の瞬間―― 「んなっ!?」  周囲の土が隆起し、そして変形。  大地は無数のドリルとなって下から一斉に襲い掛かる。  男の姿が土煙に埋もれ見えなくなるのを確認すると、女は一気に駆け抜け広い場所に出た。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加