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無数の落ち葉を踏み荒らし、木々の連なる細道へと差し掛かる手前で立ち止まり、背後を振り向く。
周囲では太い樹木が伐採されており、木々や岩などの障害物も少なく視界の開けた場所だ。昼間は陽光の差す見晴らしの良い場所なのだろうが、今は夜で雨も降っているため先ほどまでの道よりは少しマシという程度でしかない。
上空を覆うものがなにもないため、雨でびしょ濡れになりながら彼女が自分の来た道を睨みつけていると、追手はゆっくりと暗闇から出て来た。
「……ようやく観念したか? 仔猫ちゃん」
男は薄ら笑いを浮かべて立ち止まる。
全身は泥と砂で汚れているが、特にダメージはない。
息も絶え絶えの彼女と比べて、息一つ乱すことなく余裕綽々といった表情だ。
「……もうとっくに、仔猫なんて歳じゃないわよ」
「そうかい。俺からすれば、そんなもんよ」
女は柳眉を吊り上げると、腰のポーチに手を突っ込み呪文を唱える。
「……栄華を象徴せし欲塊よ、具現せよ――」
「はっ! 次は金術かぁっ!? 芸達者なことで!」
楽しそうにする敵をまっすぐに見据え、彼女は右手と左手でそれぞれ呪符を掴み放つ。
右は前方へ、左は敵の上空へ。
「急急如律令!」
次の瞬間、男の前方へ迫っていた呪符が捻れ歪み、先のとがった太い針のような金の呪具へと変わる。
それらは敵を殺傷せんと勢いよく進み、上空にまかれた複数の金の呪具もまた、一斉に飛来し襲い掛かった。
男は楽しそうに奇声を上げると、その場で踊る。
それぞれの指先に痣を集めて漆黒の爪とし、呪具を切り払い、かわしきれずに直撃した部分のみ痣を移動させて弾く。
しかし、さらに呪符は追加で投擲され、高速に移動する痣でも防ぎきれない。
少しずつ色黒の肌をかすり、貫いていく。
そしてその数多の攻防の中、繋がれる次の一手。
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