一発の弾丸

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 キングストン、ジャマイカ。  老人がベンチに座って通りを眺めている。少し離れて、女が漁の網を修繕している。バンダナを頭に巻いた少年が走ってきて、老人の前で止まり、ボール紙のピストルを構える。 「バンッ!バンッ!バンッ!」  老人は、撃たれたフリもせず、首を横に振る。 「ここに座りな。いいものを見せてやる」  皺だらけの手には、鉛の玉があった。 「海賊の弾丸だ」  少年の目が輝いた。 「おじいさんのご先祖は海賊だったの?」  返事をする代わりに、老人は話し始めた。
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