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その優艶な佇まいに心酔したが、ふと、あることに気がつく。紡葵と目線が同じだ。私は自分の身体を確かめる、いつもはある小さい胸が平たい。鏡がないのでわからないが今の私は…。
「ごめんなさい、驚かせてしまいましたね。お話をする為に、真癒ちゃんの年齢を8年お借りしています。なので、つむぎは8歳で真癒ちゃんも今は8歳です。お揃いですね」
紡葵は嬉しそうに微笑む。丁寧な言葉遣い。けれど「お揃い」という、あどけない言葉を選ぶ彼女を可愛いと思った。私は微笑み返す、そして考えた。これは夢なのかな?
目の前の紡葵は着物が白いせいか朧げに感じる。けれど、声も表情も人と話す温度で確かに目の前に在る。
ここはどこなの?貴女は何者なの?どうして私の名前を知ってるの?知りたいことは沢山ある。
いつも着ている白いルームウェアはだぼだぼ。8歳の身体には大きいそのパンツをぐいぐいと上げて、流れるように寝転んだ。
まぁ、何でもいっか。それが結論。無粋な質問はいらない。今はふあふあと怠惰に埋もれようじゃないか。きっと私がどう慌てようがここから出られない、そんな夢物語。閉鎖空間の至福を味わうように手足を滑らす。
「真癒ちゃんは外の世界では何をして過ごしているのですか?」
紡葵は横座りになって尋ねた。浜辺に打ち上げられた海月の格好をした私は戸惑う。
「え〜?外の世界って…、あはは。
んーっとね、学校サボって本読んで寝てるよ」
「がっこう…、ガッコウ、学校!」
紡葵は頭の中にある辞書を引くように「学校」を復唱した。彼女が何者か解らないがきっと学校に行かなくていいのだろう。羨ましいなぁ。
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