陶眠

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お姉さんと出会ったのは8歳の時だった、両親が離婚した小学3年生の年。家に誰もいない寂しさから放課後の寄り道が多くなった。夏休みが近いある日、温気(うんき)を帯びた風に吹かれながら商店街のアーケードの陰を歩いた。ふと、呉服屋の陳列窓に飾られた着物が目に留まる。汗ばんだ手でワンピースの裾を握っていると、お姉さんが店から出てきた。 向日葵の柄が入った藍色の着物、それを綺麗に着こなす彼女を見つめていると、優しい垂れ目と目が合った。暖簾を片付けようとした手でくいくいと私を招く。 店の奥にある部屋に上がらせてもらった。出してもらった冷たいカルピスをごくごくと飲み干す。暑かったねぇ、おかわりはどう?と、もてなすお姉さんの言葉に喉も心も潤った。そのあと、色彩豊富な着物達を近くで見せてくれた。 この白が好き。そう言うと、子供用のその着物を着つけてくれた。今、目の前にいる紡葵と同じ着物。 うん…そうだ、あの時、教えてもらったんだ、(つむぎ)と言う着物のことを。 「ねえ…、紡葵に似ているお姉さんの話、していいかな?」 すると彼女は、憂うような、悲しさを滲ませ笑顔でコクリとうなずいた。 「はい、是非」
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