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夜中の1時を過ぎた頃だった。 「ロレンツォ! ロレンツォ起きてくれ!」 カイルの声に起こされたロレンツォは何事か尋ねた。 「どうした? 何かあったのか?」 「食料が! 無くなってる!」 カイルの蒼白した顔色に事態を察したロレンツォは山小屋のリビングの一角に集めた3人の備品を確認した。 3日分の食料がごっそりと何者かに盗られていた。 「どうゆう事だ?!」 「わからない! 目が覚めたら、もう、無くなっていたんだ!」 ロレンツォは片手で顔をぬぐうと、とっさにポケットにある懐中時計で時刻を確かめた。 「夜中じゃないか」 窓から外の景色を見るとまだ吹雪は吹き荒れていたが、視界はある程度見渡せる状況だった。 「不審な人影や物音は無かったのか?」 「アメリアが……」カイルは言いかけたが、ロレンツォに目配せをした。 暖炉のそばでアメリアが身を潜めて震えていた。 「アメリア、何か見たのか? 誰かが、この山小屋に来たのか?」 アメリアは暖炉の炎の揺めきを一点に見つめながら瞬きをすることも無く、口元を震わせるだけだった。 「ロレンツォ! 見ろ! 誰かが盗みに来たんだ!」 カイルが玄関扉を指さした。 床に敷かれた木目の板がびっしょりと濡れていた。 「外から雪が入って溶けたんだ。俺たちの他に誰かいる!」 「だが、おかしい」首を傾げるロレンツォにカイルが「何が?」と尋ねた。 「こんな猛吹雪の中、暖を取らずに外にいるのは自殺行為だ」 「きっと外に(やぐら)か何か作ってるんだろ?」 「何故山小屋に入ってこないんだ? 俺たちから身を隠す必要があるのか?」 ロレンツォはそう言って山小屋の扉を開けて外を覗いた。 「足跡があるぞ」
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