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深く積もった雪に、確かに人一人分の足跡が続いていた。
「やっぱり。誰かいるんだ」カイルは怒りを露わにした。
ロレンツォが足跡の行く先に目を細めると、薄らと山小屋の灯りが照らされているのを見つけた。
「向こう側にも山小屋がある。五合目の小屋は一つだけだと思っていた」
「別のクルーが設置したキャンプじゃないのか?」
「そうかもな」
「あいつらめ! 自分らの食い物が無くなったから俺たちの分を盗りに来たんだ!」
「落ち着けカイル。向こうもきっと困ってるんだ。助け合わなきゃ」
カイルの怒りにロレンツォは冷静に対応し、備品の中から携帯用のアイゼンを取り出すと自身の靴に着けた。
「どうするつもりだ?」
「向こうは食料に困ってるだけだ。少し挨拶して、話をする。この吹雪は明日の昼頃には止むはずだ。それまでを凌ぐ食料を分け合えばいいんだ」
「何を言ってるんだ?! 俺たちから盗んだんだぞ?! 犯罪だ!」
「落ち着けって! もし向こうが何も食べる物がなかったら? そうは考えないのか? 飢えているのなら、俺たちの分を分け合うべきだ」
ロレンツォが一歩、外へ踏み出すとアメリアが叫んだ。
「待って! 行っちゃダメ!」
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