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「嘘だろ!? 何言ってんだロレンツォ!」
「嘘じゃない! 俺は確かにあの小屋からここに来たんだ!」
「そんなはず無ぇよ! お前は裏手から行ったじゃないか!」
ロレンツォとカイルが言い争っているとアメリアが叫んだ。
「見たのよ! 私は見たの!!」
アメリアは身体を震わせながら言った。
「何を見たんだ?」ロレンツォが尋ねるとアメリアは暖炉の炎を見ながら答えた。
「私たちが寝静まっていた頃、小屋に誰かが来たの。私は救援隊の人が来たと思った。悪天候だったし、きっと救助が来るって。そう思って扉を開けたら……」
思い出したかのように、アメリアはまた身を震わせた。
「どうしたんだ?! アメリア!」カイルが怒鳴ると、アメリアはロレンツォを見つめて言った。
「ロレンツォ、あなたがいた。もう一人の、あなたが、そこに、立っていたの」
「何を言ってるんだ? 俺はお前たちと一緒にいたじゃないか? ずっとそばに、同じ小屋の中に!」
「ええそうよ。ロレンツォはいた。でも私が見たのも、この人だった! 叫びそうになった私にナイフを……見せたの。血の付いた、ナイフだった……」
「冗談はよせ、俺は何も持ってない! 見ろ!」
ロレンツォがアメリアに近付くとカイルが立ちはだかり、ロレンツォを突き飛ばした。
「様子がおかしいぞロレンツォ! 戻って来た時からずっとおかしかった!」
「おかしいのはそっちだ! 俺はお前らの為に盗まれた食料を取り返しに来たんだ!」
起き上がったロレンツォに、カイルはバターナイフを突き付けた。
「食料は!? どこに隠したロレンツォ!」
「カイル!? 待て! 落ち着け!」
「俺たちを騙そうとしているんだろ!?」
「違う!」
「吹雪は止まない! 俺にだって分かる! お前は嘘をついて、食料を独り占めするつもりなんだ!」
「よせ!!」
「やめて!!!」
ナイフを振りかざしたカイルはロレンツォと揉み合いになった。
アメリアが止めに入ったその時だった。
カイルからナイフを奪ったロレンツォはカイルの手を振り解き、腕を振り切った。
振り切った手に握るナイフの切先が間に割って入ったアメリアの喉を裂いてしまった。
「嘘だ! ああ!!」
喉元を抑えて倒れ込むアメリアを抱えるカイル。
ロレンツォの手に握るナイフにはアメリアの血が付いていた。
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