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3
「ああくそっ!! どうしたらいいんだ?!!」
止血しようと喉元を押さえ付けるカイルだが、アメリアは息が出来ずに自身の血で溺れていた。
2人の状況を見たロレンツォはとっさに裏口から逃げた。
吹雪に身を晒されたがあのまま奇妙なもう一つの山小屋の中に留まっていては自分自身の身も危険だとロレンツォは直感していた。
裏手から続く足跡を踏みながら小屋から遠ざかった。
行先に見えたのは山小屋。見覚えのある形だった。
「助けて」ロレンツォは山小屋が近付くにつれて声を漏らした。恐怖が支配していた。
正面玄関のランタンは灯りが消えていた。
ドアノブに手を伸ばすと、扉はロレンツォが押す前に勝手に開いた。
「……なんで? ……どうして??」ロレンツォは目の前に佇む人影に激しく動揺した。
喉を裂かれて死んだはずのアメリアが扉を開けて立っていた。
アメリアは目の前のロレンツォをまじまじと見つめた。そして視線を下に向け、目に見えたものに驚いた。
ロレンツォの手には血の付いたナイフが握られていた。
恐怖におののいたアメリアはゆっくりと後退りし、寝静まっているカイルともう1人の人物を見て、身体を震わせた始めた。
ロレンツォはアメリアから視線を晒さずに小屋へ入り込んだ。
横目で備品のある場所を確認し、一つにまとめられた食料袋を手にした。
アメリアは暖炉のそばに身を潜めて、身体を震わせながら身を縮こませていた。
「すまない。アメリア。殺すつもりは、無かったんだ」
ロレンツォはそう言うと、来た道を振り返った。しかし、もと来た道の先にある小屋には死んだアメリアと怒り狂うカイルしかいない。
ロレンツォは裏口へ進んだ。もう1人の人物の横を通り過ぎたが、決して顔を見ようとは思わなかった。
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