ちぐはぐアマービレ

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「……ねぇ、行かないの?」 「……」 「まさか、まだ私と一緒にいたいとか?」 さっきからこたつでぬくぬくと身体を温めながら一向に動く気配のない椎名先輩を見て、思わず心の声が漏れる。 そうすれば、スマホに向いていた視線がゆっくりと此方に移り、ぱちっと視線がかち合った。 「そういうお前は、何で俺のグラスに酒注いでんの」 「え?」 先輩にそう言われて気付いた。 先程空になったはずの先輩のグラスには、いつの間にかたっぷりのお酒が入っていた。 「わ、私のグラスと間違えた」 「ふーん」 「……」 「……」 「せっかくだから、もう少しここにいれば?」 「しゃーなしな」 「スモークチーズ持ってくる」 「またつまみかよ」 まぁ、つまみ好きだけど。とため息混じりに続けた椎名先輩と視線が絡むと「だっせえジャージ」と続けざまに悪態をついた彼は、呆れたように笑った。 「(あれ、なんか帰ってほしくないな)」 「(やっぱこのまま泊まってやろうかな)」 ちぐはぐなふたりの 拗らせた恋の話はまだ終わらない……? ちぐはぐアマービレ fin.
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