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「へ?」
瞬時にネズの言葉の意味が理解できず、間抜けな声を上げると、ネズにふわりと、ソファの上に押し倒された。
「エルちゃん、ホント警戒心薄いよなぁ。そうやって、簡単に人をお茶なんかに誘ったらダメだろ。ハゲが心配するのも分かるよ。」
「ネ、ネズ君?」
友達の突然の行為を頭が受け入れようとしない。
声を上擦らせるエルシェットを見下ろしてネズがにやりと笑う。
「どうしたの?発情期?いや人間に発情期はないか……。あっもしかして、呪われてる?」
「―――おまえが綺麗だから悪いんだよ。」
ネズがはっきりとした口調で言った。エルシェットの両肩を押さえつける手に力が加わる。
「おまえ、自分が美人なの分かってる?その髪も、顔も、声も―――男を誘惑してるのに気付いてないの?」
「……やめて。」
見下ろすネズの暗い瞳に熱が揺らぐ。おろおろと言葉を返すことしかできない自分が情けなかった。
「旦那だって、おまえのこと助けてやるとか言いながら、本当はおまえの体が目的なんだ。俺なんかよりもおまえの方を抱きたいと思ってるよ。」
「そんなこと……。」
ネズの手が頬に触れる。指先で頬から唇にかけてを優しくなぞられると、体の奥がぞくぞくと震えた。その戦慄きが何か、認めたくなかった。
「おまえには醜い奴の気持ちなんて、分からないよ。」
ネズの顔にはべったりと嫉妬の色が浮かんでいた。
そう吐き捨てると、ネズの顔が近付いてきて、エルシェットはぎゅっと目を閉じた。
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